対ロシアでウクライナと北方領土は切り離して考えろ --- 東猴 史紘

アゴラ

安倍首相は米国の対ロシア制裁への支持を避けたという報道が流れた。北方領土を巡って、ロシアとの関係を保ちたいという事情があるという。首相は就任以来、プーチン露大統領と5回も会談し、親密ぶりをアピールしてきた。ソチ五輪でもオバマ米大統領やオランド仏大統領などが開会式の出席を見合わせる中、首相は出席してプーチン大統領との関係を優先したほどだ。

しかし、今回のウクライナへの軍事介入を決定したロシアに対して日本が同調する余地はない。そのもそも一連の事変はウクライナがEUなどの欧米諸国との関係を強めることがないように、ロシアがウクライナ国民の人権を踏みにじっている侵害行為だからである。


まず、今回のロシアとウクライナが衝突するまでに至った背景を簡単に振り返る。事の発端は、昨年11月だ。ウクライナのヤヌコビッチ政権がロシアからの圧力もあり、EUと政治・経済関係を強化する協定の署名を取りやめた。これが全ての始まりである。この署名取りやめに対して、市民がSNSを使い首都キエフにてデモをおきた。この時は2000人だったようだが、その後、デモは大規模になり最終的には35万人に膨れ上がった。デモ隊と警官隊も大衝突。ロシアもヤヌコビッチ大統領を支援するために、150億ドルの金融支援と天然ガス輸出価格を1/3にすると決定した。

2014年に入ってもデモは続いた。ウクライナのアザノフ首相と全閣僚が総辞職、議会もデモ規制法を撤廃した。2月には過去最大規模の衝突が起こり75名の死亡者も出た。さすがにヤヌコビッチ大統領も事態の収拾を図るために大統領選挙の前倒しを決め、自身はウクライナ議会から追放され亡命した。その後、大統領代行に選任されたトゥルチノフ議長は親EU路線に転換を発表。2/26にはウクライナ暫定首相候補にヤツェニュクを選出し新内閣が発足した。その直後、ロシア系住民が約6割を占めるウクライナの半島であるクリミア半島が武装集団に占拠された。これに対して、プーチン大統領は自国民を保護するためという名目でクリミア半島への軍事介入を決定した。

上記の流れをみても、ロシアの非は明らかである。日本は欧米と同調してロシアの行動を止める側に回らなくてはならない。北方領土にだけ目が向いていると大局を見失う。北方領土のことは一旦置いておいて、ウクライナの安定化に寄与すべきである。

東猴 史紘
元国会議員秘書
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