ウィーン市教育委員会が公表した生徒の宗教調査によると、ハウプトシューレとミッテルシューレでは、イスラム系生徒数がカトリック系生徒の数を上回っていることが明らかになった。
▲ウィーン市16区の工業高校(HTL)(2014年3月22日撮影)
ハウプトシューレでは現在、1万734人の生徒がイスラム系、カトリック系は8632人、セルビア正教系4259人、そして無宗教3219人だ。
ギムナジウムでははイスラム系はまだ少数派で5395人だ。参考までに、フォルクスシューレの場合、カトリック系2万3807人、イスラム系1万7913人、無宗教1万1119人、セルビア系6083人、その他2727人、プロテスタント系2322人だ。
ハウプトシューレの場合、ドイツ語ができない移住者2世の子供が多いという事情がある。イスラム系生徒が今後も増えてくることが予想されるため、ウィーン市教育委員会は生徒のドイツ語教育の強化などの対応に乗り出している。
読者の皆さんの理解を助けるために、オーストリアの教育システムを簡単に紹介する。幼稚園を終えると、フォルクスシューレ(4年間)の後、ハウプトシューレ(4年間)、またはギムナジウム(8年間)か、HTL(工業系) HAK(商業系)と進む。フォルクスシューレは6歳から9歳、ハウプトシューレが10歳から14歳、そしてギムナジウムが10歳から18歳までだ。
日本の小学校に当たるフォルクスシューレで勉強に関心がない生徒や成績が良くない子供、早く職業に就きたい子供はハウプトシューレを選ぶ。もちろん、特定の職業教育を習得したい場合、2年から4年の職業学校に通う。将来大学など高等教育に進学したい子供はギムナジウムに進学する。8年間学んだ後、マトゥーア(Matur,卒業試験)に合格すれば、希望の大学に入学できる。
与党の社会民主党が「子供に早い段階で人生の道を決定させるのは良くない」としてミッテルシューレを提案し、フォルクスシューレからミッテルシューレに通い(この間14歳まで一律)、その後、大学進学希望者は、ギムナジウムの上級学年(Oberstufe)に編入できる体制だ。ミッテルシューレの導入が進められているが、まだ実験段階だ。
ところで、イスラム系生徒が増える一方、カトリック系生徒が減少することで厄介な問題も生じる。ウィーン市教育法では、学校で生徒の過半数以上がキリスト系生徒の場合、教室に十字架を掲げることができる。過半数以下の場合、学校が十字架をかけるかどうかを自主的に決定する。
しかし、イスラム系出身の生徒数が多くなり、生徒の親から十字架を外してほしいという要望が出てきて、学校側が苦慮するケースが最近増えてきている。学校側と生徒の親たちの間で十字架騒動が生じ、メディアで報じられることもある。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。