改善すべき海外から日本への送金システム --- 岡本 裕明

アゴラ

海外送金は多くの日本の方には縁がないかもしれません。海外旅行はクレジットカードと小口現金で用が足りますから海外からの送金は正に海外で居住した人や居住する人への送金という関係がほとんどだろうと思います。これを裏返してみれば日本が国際化していない一面かもしれません。

これが海外に出てみるとかなり多いことに気がつきます。私の知り合いのカナダ在住のロシア人社長は本国に定期的に多額の資金を送金しており、氏の出身地の町では英雄扱いされているとのことでした。送金理由は本国にいる親せきや出身地への寄付など多岐に渡ります。


香港に出稼ぎに来るフィリピン人は週7日働いて稼いだお金の7割を本国の家族に送金するとされています。私の周りにいるフィリピン人もそうしている人がほとんどです。自分よりも家族や親せきを思う気持ちはメキシコ人でも東南アジア系の人でも東ヨーロッパ系の人でも非常に高く海外送金への需要も当然高いものになります。ただ、一回当たりの送金額は決して多額ではなく、むしろ、ちょっと資金ができればすぐに送金するという手軽さが彼らにとっては重要なファクターのようです。

私がカナダで取引しているロイヤルバンクの場合、一日当たり2500ドル(約23万円)までなら手数料は13.50ドル(約1200円)でインターネットバンキングで24時間、簡単に送金できます。また、日系の銀行でもカナダドル建ての送金ならいくらでも確か35ドルで送金してくれます。つまり、送金する側は比較的ハードルが低いのです。

ところが日本の問題は受け側にあったりするのです。まず、日本にカナダドル建ての送金をするには日本にカナダドル建ての口座を持っている必要があるのですが、このカナダドル建て口座を作れる銀行はなかなかないものです。私の知る限りりそな銀行で作れるのですが、案外メガバンクでも米ドルやユーロならともかくあまりメジャーではない外貨の口座は扱っていないことが多いのです。それ以外にはシティバンクなどが一般的だろうと思います。

次に送金をすると受け手銀行が決して安くないリフティングチャージなるもの(送金を受けた費用)を取ります。更にいつかはカナダドルから円に換えるわけですからその際の為替手数料もかかってきます。もちろん、海外の銀行で円転して送ればそれらの問題はほとんどありませんが、銀行にすれば円転が最も美味しいビジネスの一つですから為替手数料はよくよく確認する方がよいでしょう。

もう一つの注意点は100万円以上の送金の場合、財務省に報告義務があるということです。銀行が代わっていちいち書類を書き込んで報告してくれます。そのためにまず、送金すると受け手の確認の電話がかかってきて、送金の目的を銀行から聞かれます。銀行は好きで聞いているのではなく、財務省に報告する義務があるのでそうしているのですが、最終的にそれは税務署に筒抜けになります。よって、あまりに多額の送金をすると税務署から「お尋ね」の手紙を受領することになります。税務署は税金を取ることを仕事としていますから送金されたお金が課税対象になりかねないのでかなり注意が必要です。

ここまで書くとなるほど海外送金はなかなか面倒くさいものだと感じてもらえるのではないでしょうか?

一般的には海外送金が多いのは移民を積極的に受け入れている国で新興国からの人が多い場合でしょう。アメリカでもメキシコを含む中南米への送金は多いでしょう。ビットコインが流行した元々の背景も海外送金の手数料の安さがポイントでした。そういう点からすれば日本の銀行システムを通じた海外との資金のやり取りは世界水準で見れば相当立ち遅れているのですが、移民も限定されている中、その必要性もないということなのでしょうか?

国際化ニッポンとしては盲点の一つでありましょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。