日本の若者よ「偏差値教育」から脱出し海外へ出でよ --- 江本 真弓

アゴラ

偏差値教育の擁護論、興味深く読んだ。

常見 陽平氏の

茂木健一郎さん、偏差値と予備校は偉大です(追記あり)?/p>

茂木健一郎氏の偏差値、予備校批判が、カタルシスにはなるが、若者をまったく救わないのである。

との主張だが、では偏差値と予備校を偉大と言って若者が救われるか、についても疑義を感じる。これからの若者のための教育としての「偏差値教育」の是非は、重大な問題だ。そこで「これからの若者のための教育」に重点を置き掘り下げて考えてみたい。

結論から言えば、「偏差値教育」では、これからの時代の若者は救われないだろう。


なぜならば「偏差値教育」これからの時代を生き抜く力を育てることが難しいからだ。救いを求めるのであれば、これからの「若者」は、予備校産業に貢ぐお金があれば海外大学に留学しよう。と勧めたい。

その根本理由として、何しろ日本の高度成長の富と勢いに乗っかり甘えていられた今の「若者」のお父さんお母さん達世代とその上の団塊世代はと、これからの「若者」では社会経済環境が違う。

少子高齢化傾向の問題は、20年前には指摘されていた記憶があるが、以降未だに本質的な対策がない。団塊世代は確かによく働いたが、一方その裏で、1000兆円を超す世界有数の大借金を積み重ねた。それでも自分達の老後の面倒はみてね、借金も返しておいてね。ということらしい。

既に偏差値教育世代である今の「若者」のお父さんお母さん達世代は、団塊世代に追従し、団塊世代体制の枠組みの中でしか社会経験を持たない。

しかし団塊世代以降を生きるこれからの「若者」は違う。今までよりはるかに少ない人数で、もはや経済成長期の富もないどころか、逆に世界有数の借金大国の日本を支えるという未曽有の難題に立ち向かわなければいけない。

これも重大な理由だが、「偏差値教育」では、そのための力を育てることが難しい。

「偏差値教育」では、未経験の難題に立ち向かうことが難しい理由は、困難に立ち向かい、生き抜く原動力となる「個性」や「人間力」が育てられないことだ。常見陽平氏のこの本末転倒な一文は、図らずもそれを表している。

「なお「個性」や「人間力」を重視する入試が礼賛する動きには、私はNOと言いたい。これらを磨ける家庭環境の差が物を言うのはどうか。貧しい家庭に生まれた者は、ますます這い上がれなくなる。何より、基礎学力は大事なわけで。」

家庭環境を言うならば、予備校頼りの基礎学力重視こそ、予備校に通う経済余裕のない家庭の子供にとって不利となる。

逆に「個性」や「人間力」重視こそが、経済力その他の家庭環境に恵まれない子供にとって、自己の人生を自分で築くための貴重な機会だ。日本も貧しい家庭の子供は学校に通う余裕のなかった時代に、それでも自分の人生を切り開いた人達の原動力は、「個性」「人間力」及びそれに支えられた意思力だった。「個性」や「人間力」が家庭環境によって磨かれるものだと浅く考えられてしまうこと自体、図らずも偏差値教育の「個性」「人間力」対応の弱さを証明している。

「基礎学力」と「個性」「人間力」は、相反するものではないが、長年の偏差値教育でこの日本から「基礎学力」は高いが、「個性」や「人間力」を備えた「器」を感じさせる人間が減少している事実は、今の日本の社会の偏差値教育で育ってきた40代50代を見わたせば一目瞭然ではないだろうか。良くも悪くもこれからの日本経済政治を託せると思える器を感じる人物が一体どれだけいるだろうか。少し目立った偏差値教育エリートのホリエモン、勝間和代氏、橋下徹氏など、皆あっという間に中折れだ。

偏差値教育で育てられる「基礎学力」など、せいぜい所詮社会経済の歯車として働く労働者の必要スキルでしかない。そこに「個性」「人間力」がついてこなければ、社会の優秀な歯車以上の仕事は出来るだろうか。もちろん相応に備わった優秀な人物も大勢いる。しかし予備校の偏差値教育で無理に「偏差値をあげる基礎学力」をかさ上げしたところで、「個性」「人間力」が伴わなければ、ブラック企業勤務か大企業の歯車としてメンタルを病む罠に陥る可能性は低くない。

「偏差値教育」でも何でもよいのだが、これからの「若者」には、「基礎学力」と「個性」「人間力」をトータルで育てられる環境を求めることを薦めたい。とはいえ偏差値教育人間が主流のこの現在の日本で、「若者」が「個性」や「人間力」を育てられる人や機会に恵まれることは難しい。だから私の提案は、「歯車」製造コース向けの塾や予備校ビジネスにお金を貢ぐくらいならば、そのお金で海外の大学に留学を志そう。

「専門学力」を身に付け、しかも「個性」「人間力」を磨くことが出来る上に、日本では得られない広い視野を得られ、英語又は英語及び他の外国語並びに国際コミュニケーション力まで習得できるのだから、1石5鳥だ。

もちろん大変な事は多いが、この沈みつつある日本の沈没に身を任さるより、よほどサバイバルだろう。探せば奨学金制度もある。生活費は現地でアルバイト調達をする強者は、いくらでもいる。

これからの若者は、世界に出て世界の色々な人たちと出会い、話をして、一緒に考えて、これからの世界の中の日本で生き抜く力を身に付けよう。だから私が留学生だった時代、意識の高い留学生達の間で言われていた言葉を贈りたい。

「狭き日本を出でて広き世界を知れ。狭き世界を知りとき広き日本に生きよ。」

江本 真弓
江本不動産運用アドバイザリー 代表