中国の習近平国家主席は3月28日、ドイツを公式訪問し、アンゲラ・メルケル首相、ヨアヒム・ガウク大統領と会談した。同主席は、両者から北京当局の人権蹂躙を指摘され、言論の自由の重要さを諭された。そして国家主席の行く先々で海外亡命チベット人や法輪功信者たちの抗議デモと遭遇せざるを得なかった。
独高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ」(FAZ)は28日電子版で「中国とドイツはパートナーだが、友人ではない」(Partner, keine Freunde)とかなり厳しい表現で両国関係を総括し、「戦略的パートナーは調和的な友人関係とは違う」と書いている。
財政危機下にあり、多数の失業者を抱える欧州諸国にとって、中国市場は重要であり、その投資は魅力的だ。中国はそのことを誰よりも知っている。中国にとってもドイツは第3番目の貿易相手国であり、その工業技術は喉から手が出るほど欲しい。
独中関係はこれまで双方の実利を中心に発展してきただけに、中国はドイツに対していい印象を抱いてきた。そのドイツから今回、「中国はドイツの友人ではない」と玄関払いされたようなショックを受けたはずだ。
欧州諸国の中で中国と経済関係を結びたくない国は少ない。しかし、北京政権がそれゆえに「わが国は世界から愛されている」と受け取るとすれば大きな間違いを犯すことになることが今回の訪独で明らかになった。すなわち、ドイツは中国を日本や米国と同じように友人とは見ていない。厳密にいえば、経済関係の相手に過ぎないということだ。
なぜ、中国はドイツの友人ではないのか、北京政府はじっくりと考えるべきだろう。ドイツと中国ではその国体が異なる。価値観、世界観が違う。ドイツは議会民主主義国家であり、中国は共産党独裁国家だ。国際社会の異端児、北朝鮮とは友邦関係を結ぶことができても、ドイツとは貿易関係に留まるのだ。
別の例を挙げてみよう。ウクライナのクリミア半島のロシア併合問題で、欧州とロシアが貿易パートナー関係だが、友人関係ではないことが改めて明らかになった。
旧ソ連共産政権の後継国ロシアは、70年間余りの共産党政権時代の過去を清算し、隣国へ謝罪などの歴史の再考プロセスを行ってこなかった。だから、欧州は今なお、旧ソ連の後継国ロシアから脅威を感じている。友人関係からはほど遠いのだ。
プーチン氏は自国へ制裁を課す欧州に対し、「欧州はロシアの友人ではなかった」と痛感して、寂しさを味わっているだろう。ちょうど、習近兵国家主席が今回の訪独で味わったようにだ。ロシアがソ連共産政権時代の蛮行を謝罪し、議会民主主義社会に再生されるならば、欧州は心の底からロシアを頼もしい友人として歓迎するのではないか。
中国の場合も同じだ。その共産党独裁政権を放棄し、人権・言論、信教の自由を遵守する社会となれば、たとえ中国が経済大国でなくなったとしても、欧州は中国を友人として暖かく迎えるだろう。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。