イオンがスマホの通信サービスへ参入する効果とは --- 岡本 裕明

アゴラ

日本でスマホの普及率が他国に比べて圧倒的に低いその理由の一つにその料金体系にあるとされています。ガラケーの時はあった無料通話のおまけもスマホはありません。結果としてスマホにしたけど止めた、という人の声もよく聞きます。

先日高校のクラスメートの集まりの際、なんとなく話題になったのが携帯。そして、「俺も」、「私も」もと取り出したのはスマホとガラケーの二刀流。通話はガラケーでということのようでした。私のようにあまり鞄を持ち歩くのが好きではない者にとってはスマホがポケットに入っているだけでもうっとうしいと思うことがあるのにその上、ガラケーまで持たなくてはいけないかと思うとぞっとします。


一昔前、高校生がアルバイトをする理由は携帯をもって通話料を払うため、というのを聞いて仕事とはそんなものではないと呟いていたのですが、学生のように使える小遣いが限定されている中、スマホだけは絶対に止められないという社会で育った子供たちはある意味かわいそうな気もします。午後4時ごろの電車に乗れば学校帰りの高校生に出くわすことがしばしばですが、男子生徒が3人集まればスマホと携帯型ゲーム機、更にガラケーまで持ち、両手を駆使してゲームとメール、チャットでうつむきながら当たり障りのない会話をしているシーンに時々出くわすのですが、もはや、スマホもゲームの端末としての機能が優先されているような気がします。

私にとってスマホの最大利点は海外との無料通話でしょう。カナダに居る時は家でもオフィスでも現場でも行きつけの飲み屋でもNPOの活動場所でも全部WiFi環境にあって自動接続しています。つまり、外を歩いているとき以外はネットにつながりやすい、だからLineでもViberでもKakaoでも繋がりやすいのです。日本に行けば持ち歩くのは嫌ですが一応、WiFiルーターがあります。更に株式のトレードでも使えますからどこにいても売買注文が出せるのは便利かと思います。

さて、日本でスマホが高いのは基本料金に上乗せされるインターネットへのパケット料金。さまざまなタイプが出ていますがパケット定額となればそれだけで5000円程度になり、様々な料金を足しこんでいけば1万円近くいくことになるのでしょう。そしてその料金体系は複雑怪奇で一般の人が読んでも結局どれが得か分からない仕組みにあることがスマホが普及しない最大の難点である様な気もします。

そんな中、回線を借りて安い金額のSIMを提供するビジネスが出てきていたのですが、スーパーのイオンがSIMにスマホを合わせる形のビジネスを立ち上げました。結果として端末と回線で月2980円と大手の半額以下に抑える価格を実現できるようです。私のように日本には出張ベースでしか行かない人間でもガラケーだけでは不便で日本用のスマホを買うかどうか悩んでいた時だけにこれは便利になると思います。

高齢者を含め、携帯の使用頻度はかなり限定されるという人は多いものです。一日1度鳴るかどうか、売り込み以外の本当のメールも一日数件という人は相当に上るはずです。それにもかかわらず、いつの間にか高い使用料を払っている人はかなり多いはずです。そういう人がもっとシンプルな料金体系の下、安心して加入できる格安のスマホは非常に意味があります。そしてイオンというネームブランドがそれを支えることになります。今後、この手のビジネスはかなり出現してくるとみられます。それこそ、イオンがやるならコンビニ各社が目をつけないはずはないでしょう。つまり、今まで通信とはその手の専門会社のもの、という時代から明らかに事業間の壁が崩れた点についても注目すべきです。

このイオンの取り組み、私は非常に期待しています。先週はヤフーが携帯第四位のイー・アクセスをソフトバンクから買収することになりましたがそれを受けて株式市場ではアナリストが「買収の効果不明」としヤフーの株は大幅に下落しました。私はこのアナリストの見方が狭いと思っています。世の中、ビジネスの展開ネタはゴマンと転がっています。今後の参入業者とマーケティング次第では携帯三社の構造は大きく変化する可能性が出てくるとみています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月31日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。