そろそろ日本の半導体産業にも「オレのターン」がくるんじゃないか --- うさみ のりや

アゴラ

最近官僚時代に携わっていた半導体プロジェクトが一段落つく時期でちょこちょこ報告を受けます。官僚辞めてもこうして連絡してくれるのは有り難いです。

ご存知の通りエルピーダはマイクロンに吸収され、ルネサスも青息吐息で、ロームすら赤字に食い込み、東芝独り気を吐く状態で今日本の半導体産業は瀬戸際にあり、すっかり国内では「昔の産業」扱いされかけているわけですが、個人的にはオワコン認定するのはまだ早いのではないかと思っております。っていうか半導体市場は1990年に500億ドル規模だったのが、今では世界規模では3000億ドルを越え6倍にまで発展した成長市場であるはずで、韓国も台湾もアメリカもヨーロッパもその恩恵を享受する中で、日本独りシェアを50%から20%を割るまでに落として取り残された、というのがグローバルな視点というものなんでしょう。

半導体市場シェア

(https://www.semiconportal.com/archive/blog/chief-editor/090714-univelectronics.html?print)

半導体、特にMPU、というのは情報化時代のコアとなる部品ですし、その基盤を失うことは軍事的にも産業的にも取り返せない大事なもの失うとの判断でルネサスに関しては国有化という選択肢が取られたのでしょう。振り返れば20年前にはintelもDRAM部門を売っぱらい、アメリカの半導体産業もすっかりオワコン扱いされていたのが、PCやスマホなりの新たな製品なりファブレスというビジネスモデルなりで復活したわけで、日本にもその可能性が無いとは言えないでしょう。ルネサスに関しても鶴岡工場の売却なり、子会社のアップルへの売却なりでようやくリストラも一段落見えそうですし。

hierarchyノーマリーオフ

(http://www.hal.ipc.i.u-tokyo.ac.jp/research/noff/index-j.html)

個人的にはMRAM、Reramといった新たな不揮発メモリが市場化してくる中で徐々にコンピューターのメモリアーキテクチャが変化してくるはずで、そこに勝機を見いだすしか無いと思っているのですが、SSD市場が拡大する一方HDDが黄金時代を終えつつあるのはとても示唆的であると思っています。

スクリーンショット 2014-04-04 19.09.04

(http://snia-j.org/docs/education/20131125-1.pdf)

そういう中で異次元からの刺客と言いますか、マルチコアソフトウェアの大手のフィックスターズがSSD分野への参入を視野に入れて上場したのは将来に対する期待を抱かせてくれます。他にも我が古巣のnedoがシグリードのようなSSDコントローラのファブレスベンチャーに助成したのは良き話で、漸く日本の半導体業界にも希望が見えてきたと勝手に外野から感慨を持って見つめております。そしてどこにでも影が見える竹内健先生はさすがだなと。なんとなくキャラクター的にも実力的にも対抗できそうなのは九州大学の井上弘士先生くらいしか思い当たらない。

(フィックスターズ上場:http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2014040200578)

一方で国としてできることは何かと考えたら先日の東芝の話ではないですが、大手電機企業がリストラするたびに韓国企業へ技術が流れるという事態を止めるために、知的財産制度に関する懲罰的賠償制度の導入なり国プロ関連特許に関する介入権の保証なり、本格的に知的材差制度を見直すべき時期が来ていると思うのですがいかがでしょうか?

個人的にできることは株を買うくらいことしかないのですが、応援してます

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2014年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。