世界の指導者の中でもいま最も人気の高い人物はローマ・カトリック教会のローマ法王フランシスコだろう。同法王は8月14日から18日、韓国を公式司牧する。
詳細な訪問日程はまだ公表されていないが、中央日報日本語電子版によると、8月13~17日に大田や忠清南道一帯で開かれる「第6回アジア青年大会」に参加する一方、列福式を挙行する予定だ。
いずれにしても、南北分断国家の韓民族にとって、信者たちだけではなく、一般の国民にとっても法王の訪韓は朗報として歓迎されているという。ちなみに、1984年にヨハネ・パウロ2世が訪韓してミサを行った時は、ヨイド広場に約100万人の信者が集まった。
韓国にキリスト教が本格的に伝わったのは日本(1549年、イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエル)よりかなり遅く、18世紀に入ってからだ。日本のように宣教師がキリスト教を伝達したというパターンではない。
バチカン放送独語電子版6日によると、「韓国のカトリック主義は非信者によって導入された」という。それによると、韓国人学者たちがキリスト教を当初、西側哲学(西学)と考えて学んでいた。その教えが宗教であることを知って、学者の一人が北京で洗礼を受け、その後、韓国に帰国して同僚たちに広げていったというのだ。韓国のカトリック主義の特徴は海外への宣教熱だろう。韓国宣教師は全世界で活動している。
ワシントンDCのシンクタンク「ビューリサーチセンター」によると、韓国ではキリスト教が29・4%。仏教が22・9%、無宗教46・4%、イスラム教0・2%、ヒンズー教0・1%以下、民族宗教0・8%、ユダヤ教0・1%以下だ。キリスト教ではプロテスタントが約800万人、カトリック教徒500万人だ。東アジアではフィリピン、東ティモールについで人口全体に占める信者の割合が高い。
興味深い点は、韓国ではどの宗教に属しているかが非常に重要なことだ。プロテスタントの信者だった李明博氏が大統領に就任すると、その周辺の閣僚、関係者にクリスチャンが多く登用され、そうでない政治家、関係者は疎外されていった。そこで仏教徒集団が抗議デモをしたことがあった国だ。李大統領は、ソウル市にあるプロテスタント系「ソマン(所望)教会」の長老として知られていた。
当方も当時、2、3の韓国人外交官と付き合いがあったが、いずれもクリスチャンだった。知人の外交官は奥さんに進められてクリスチャンになったばかりだった。「クリスチャンのほうが出世にも有利」という世俗的な打算が働いていたのかもしれない。
李政権が発足した時、駐オーストリアの韓国大使館では、大使と公使はいずれもクリスチャンだったが、大使はソウルに呼ばれ、後に外相に抜擢されている、といった具合だ。
韓国は世界的自殺大国だ。物質的消費文化が急速に拡大する一方、国民の心は乾燥してきている。フランシスコ法王が韓国国民にどのようなメッセージを伝えるか興味深い。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。