遺伝子工学が造る新しいビールとは

アゴラ編集部

そろそろ温かくなってきました。ビールが美味い季節ですね。

分子生物学の進化でいろんなことがわかってきたんだが、我々が飲んでいるビールを造る「ビール酵母」の全ゲノムも解読済みで、もともとはパンを作ったりする出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の一種のようです。いわゆる「イースト菌」からアルコール発酵ができる出芽酵母が現れ、ワインや日本酒などを造る多種多様な亜種が派生することになる。


「ビール酵母」もその一つで、世界で初めて「ビール酵母」の全ゲノム解読をしたサントリーによれば、元祖出芽酵母とは遺伝子がけっこう違っているらしい。この記事では、ラガービールの「ビール酵母」は約500年前にバイエルンの洞窟や修道院にその源流をたどることができる、と書いています。

アルコール飲料の歴史とともに我々は連綿と出芽酵母を遺伝的に改良してきたんだが、「ビール酵母」の遺伝子が複雑ということも、こうした過程によって生じたんでしょう。ワインやビール、日本酒、ウイスキーなどの酒類は、当然、アメリカ大陸が「発見」される前の「旧世界」のものです。

しかし、南北アメリカ大陸には知られざる出芽酵母があるらしい。これには「旧世界」の酵母にはない特徴があり、両者をハイブリッドすれば、また新しい酵母ができます。新しいビールを造るだけではなく、バイオマスや糖分解、発酵、といった工業生産にも大きな影響が期待できる。

世界には、まだ人類が知らないこうした「生物資源」があります。2010年の「名古屋議定書」では、国際的に遺伝資源の保護とその利益の公平な分配が定められました。「新世界」出芽酵母も同じ「生物資源」なんだが、このあたりの資源争奪競争も議定書をよそに苛烈さを増しているようです。

PHYS.ORG
Scientists firm up origin of cold-adapted yeasts that make cold beer


Ferrari Is Building Its First Luxury Hotel In Barcelona
BUSINESS INSIDER
「跳ねウマ」の高級スポーツカーメーカー、フェラーリがスペインのバルセロナ(Barcelona)で高級ホテルを作っている、という記事です。2016年に開業するらしい。フェラーリはすでにUAEのアブダビに「フェラーリ・ワールド・アブダビ(Ferrari World Abu Dhabi)」という世界最大級のテーマパークを作っているんだが、バルセロナに近いポルトアベンチュラ(PortAventura)リゾート内にも「フェラーリ・ランド(Ferrari Land)」というテーマパークが作られ、ホテルもその中に設置されるそうです。アブダビで成功をおさめ、次はバルセロナ。世界的に「富裕層」が増えたためか、フェラーリは2012年に同社最高の業績を記録している。こうした娯楽事業でも、世界進出を目論んでいるんでしょうか。

Nano-Robots That Compute With DNA Installed Into Living Cockroach
POPULAR SCIENCE
生きているゴキブリのDNAにナノサイズの「ロボット」を挿入し、コントロールする、という記事です。『ニューサイエンティスト』掲載なので、どうかなと思っていたんだが、あの『nature』にも出るらしい。まだ、免疫系が複雑なほ乳類には難しい。しかし、5年以内にヒトでの応用が研究されるようになりようです。

ネット史上最大級のバグ発見。カナダは確定申告を緊急停止、危険度は10段階の11レベル?
GIZMODO 日本版
「鍵」と「暗号」に依存しているのが、インターネット上のセキュアです。この仕組みをかいくぐり、打ち破ることに快感を感じる人たちがいる。イタチごっこです。この記事では「OpenSSL」というオープンソースのパッケージに、かなり重大な「穴」が空いていた、と書いています。けっこう有名なサイトに危険性があるらしい。使ってる人も多いんじゃないでしょうか。要注意です。

軽量型電動車いす&車いす用電動ユニット
ヤマハ発動機
こういうのが出るのは初めて、というのがちょっと信じられません。とっくにあるもんだと思ってました。車いすの歴史は古い。文献などの残っているだけでも1000年くらい前には出現しているようです。足の不自由な人が使うことが多かったので、長く手を使って車輪を動かしていた。これに補助的な動力源をつけたものが登場したのは、20世紀の初めごろらしい。最初は電動ではなくエンジンをつけていた。その後、電動化が進み、今の日本ではJIS規格になっています。公道利用のためには時速6キロ以上出せないことが条件だそうです。


アゴラ編集部:石田 雅彦