日韓両国は今こそ世界を驚かせ --- 長谷川 良

アゴラ

日韓外務省局長級会議が4月16日、ソウルの外務省で開催される。テーマはウクライナ情勢への支援問題に関する協議だ。世界の主要国の一員として両国がウクライナ問題に対し、連携して貢献を果たしていくために話し合いが行われる。

と、書きたいところだが、残念ながら、ソウル外務省で開催される両国局長級会議の議題はウクライナ問題ではなく、70年前の慰安婦問題だ。なぜ、残念なのかを少し説明したい。


慰安婦問題とその女性の人権を軽視しているからではない。アジアの代表的国家の日本と韓国両国がウクライナ問題の対応とその支援問題を協議するならば、米国を含む欧米諸国はまず驚くだろう。地理的にも、経済的にも関係の薄いウクライナの情勢について、アジアの両国がその対策で頭を痛めるということがあったならば、欧米諸国は両国を見直すだろう。

実際は、両国の局長級が慰安婦問題を話し合う。両国の立場ははっきりとしている。韓国側は日本に謝罪と補償を要求している。日本側は1965年の日韓請求権協定で解決済みという立場だ。

それぞれが自国の立場を繰り返し主張することになるから、協議の成果などは期待できない。しかし、オバマ米大統領の日韓訪問を前に何らかの外交的歩み寄りを勝ち取りたいというのが両国側のささやかな願いだろう。

一方、世界情勢に目をやると、北朝鮮問題だけではない。シリア内戦問題、ウクライナ問題から中東・北アフリカ諸国の民主化運動、南スーダン紛争、イスラエル・パレスチナ問題など、世界の平和の動向に密接に関係するテーマが文字通り山積している。

日本はそれらの問題に経済的支援などで関与しているが、政治的、外交的な貢献は少ない。一方、韓国はどうか。韓国は国連軍の派遣などで一部、関与しているが、その貢献度は更に微々たるものだ。

両国が過去の問題にエネルギーと人材を浪費するより、未来の平和実現のためにその経済力、国力を投入すべき時ではないだろうか。両国が世界平和実現のために連携して活動できれば、両国の評価は高まることは間違いない。それだけではない。両国間の過去の問題も自然に解けていくのではないか。なぜならば、両国が他国の問題解決のために汗を流すことで相互間の理解が深まっていくからだ。

過去問題を解決しない限り、未来の関係構築はあり得ないという姿勢は余りにも教条的であり、単細胞的な思考だ。日韓両国は今こそウクライナ問題を真摯に話し合うべきではないだろうか。そうすれば、世界が驚く。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。