米景気が回復の兆しをみせ、4月16日に公表されたベージュブックでは景況判断が上方修正されました。とはいえ、アメリカでの貧困率は依然として高い。米国勢局が2012年9月に明らかにした統計調査では、15.0%。金融危機直前にあたる2007年の13.5%を上回った水準を保ちます。人数ベースでは4650万人、約10万世帯が貧困に喘いでいる状況です。
2011年の試算値と比較した2012年の結果を振り返ると、
・65歳以上の高齢者で貧困層が増加
・南部で貧困層が増加
・郊外で貧困層が増加
・西部では貧困層が減少
西部で貧困層が減少したのは、住宅市場をはじめとした経済活動の回復に支えられたのでしょう。一方で競争力に乏しい南部や郊外、そして引退者を含む高齢層の間にしわ寄せがきていました。国内総生産(GDP)第1位のアメリカとはいえ、爪に火をともすような生活を余儀なくされている人々がまだまだ多いんです。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が作成した貧困層の全米マップは、カバー写真をご覧の通り。大画面でみたいあなたは、こちらをクリックしてみて下さい。
翻って、ニューヨーク市はというと。
セントラルパーク北側に広がるハーレムをはじめブロンクス、ブルックリン内部で色が濃くなるとともにパーセンテージが上昇しています。一番濃い緑色の部分で40%を超えるんですから、衝撃的ですよね。
合わせてチェックしたいニューヨーク市の地図が、こちら。
(出所: Curbed)
題して「偏見でみるニューヨーク市マップ」。
色の薄い部分、典型的なアッパーイーストサイドは見事に「WASPS(アングロサクソン系白人プロテスタント)」、「Mega Rich People(想像を絶する億万長者)」、「Incredibly Rich People(ありえないくらいの富豪)」「Very Rich People(超お金持ち)」などなど、これでもかと富裕層を示すキーワードが並びます。
同じマンハッタンでも南東部の濃い緑色のゾーンは、「Projects(低所得者層向け住宅)」、「RATS(ねずみ)」、「Grime(汚れ)」ですから、その差は歴然。北東部では「Black People(黒人)」、「Low Riders(パンツをずり下げて着用する男性)」、「New Mexico(ニューメキシコ)」と、WASPの対極にいる方々がそろいます。
2014年版、アメリカ貧困層の定義は1人の世帯で年収1万1670ドル(119万340円)、4人家族で2万3850ドル(243万2700円)。ニューヨークをはじめアメリカに根深く残る貧困問題、オバマ米大統領が提唱する最低賃金引き上げ案が通過し、救いの一手となるのか。イエレンFRB議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策が改善を促すのか、あるいは格差社会の深刻化は止まらないのか。次の統計結果が待たれます。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年4月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。