日米共同声明「満額回答」という虚構

アゴラ編集部

先日のオバマ米大統領の来日で、4月25日、日米共同声明が出されました。内容はほとんど「アジアの安全保障」についてです。TPPに関しては、継続的に合意に向かって交渉を続ける、と述べるにとどめている。この「アジアの安全保障」の中には、いくつかの項目がありますが、日本にとって重要な文言は「米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約が沖縄県の尖閣諸島にも適用される」というものでしょう。オバマ大統領から引き出したこの言葉に対し、マスメディアは「満額回答」とはしゃいでいます。


米国の政治的スタンスは「他国の領土紛争には不介入」です。フォークランド紛争でも集団的自衛権による英国の支援要請に対し、この建て前をタテにして軍事的な出動はせず、ロジスティクス面でのサポートしかしませんでした。後方支援だけでも英国には大助かりだった、という意見もあるんだが、南大西洋の小島まで出張っていって「大戦争」を展開できる英国と「平和憲法」に縛られた日本とでは事情が違うでしょう。

しかし、尖閣問題は日中二国間の領土紛争か、といえば、単純にそうとも言えません。尖閣諸島は、石垣島の北方、約130キロから150キロの海域に魚釣島、久場島(くばじま)、大正島、北小島、南小島、沖の北岩、沖の南岩、飛瀬、といった小島が点在して構成されています。この中で、久場島と大正島には在日米軍の射爆場があり、1972年5月15日の沖縄返還にともなって日本が米軍に提供する土地になっている。この射爆場、1978年6月以降、実際に米軍が訓練などで使用していませんが、依然この射爆場を手離してはいません。

中国は、魚釣島を含む尖閣諸島は自国領と主張しています。一方、沖縄返還の際に同諸島の施政権を日本に返し、射爆場を持っている米国に対しても批判している。もちろん、表だって攻撃する対象は日本です。しかし、中国としては、日本と同時に米国もこの問題の対象国とみなしている節がある。オバマ米大統領は、今回の日米共同声明で尖閣諸島の防衛義務を名言したんだが、そもそも最初から米国が「領土紛争」の当事者と自覚していた、というわけです。

さらに言えば、米国の「領土紛争不介入」の原則は「建て前」であり、イラクとクエート間の単なる領土紛争に介入して湾岸戦争にまで拡大させた過去があります。自国の都合次第で融通無碍に解釈できる「原則」というわけ。当事者ならなおさらです。射爆場という軍事施設使用権を持っている米国も相手にせざるを得ない中国が、あからさまに軍事行動を起こす可能性は現実的にほとんどありません。これは今回の「日米共同声明」以前からの公然の事実です。

こうしたことを、日本も中国も米国もあまり声高に言わないし、マスメディアが報道することもほとんどない。また、この「満額回答」と引き替えに、日本政府はTPPで大幅譲歩をせざるを得なかった、という情報もあります。日米共同声明で「満額回答」を勝ちとった、という評価は「大本営発表」なんでしょうか。

政治学に関係するものらしきもの
オバマ大統領の訪日は「成功」だったのか


「地理院地図3D」サイトで空中写真の立体地図表示を開始
国土地理院
日本の人口密集地域のほとんどは、すでに空中写真で撮影され、それを立体地図として見ることができるようになるようです。ここが「地理院地図3D」のサイト。ポリゴンがぐりぐり動いてスゴい世の中になったもんだ。高さの倍率も調整でき、スライドバーを動かすと自宅周辺の地形がニョキニョキ高くなります。3Dデータから地形の立体模型もできる。これはメチャクチャ楽しいです。

Google Invests $100 Million to Make Solar Panels More Affordable for American Homeowners
inhabitat
米国の太陽光発電会社「SUNPOWER」のソーラーパネルは、日本でも「エコマックスジャパン」が取り扱っています。そのSUNPOWER社にGoogleが250億円規模の投資をするらしい。しかし、Googleって何にでも手を出しますね。

ライカから噂のミラーレス、アルミ削り出しのLeica T来ました
GIZMODO日本版
アナログ時代、日本製カメラのお家芸といえば、ミラー有りの一眼レフでした。優秀な工学的ペンタプリズムと瞬時にミラーが上がり下りするメカニカルな機構、そして高度な動きをするフォーカルプレーンシャッターは、ドイツでさえマネができなかった。ドイツのレンジファインダーに勝てなかったNikonなど日本メーカーは一眼レフに活路を見出し、やがて世界を席巻する。ライカの売りは、むしろミラーレスなわけです。しかし、デジタル時代になると、カメラを含めたすべてのガジェットは数年で使い捨てになる。今頃、ライカが「ミラーレス」というのも何やら示唆的で、こんなバカ高い使い捨てデジカメ、ライカ信者しか買いませんね。

集合時系列は、生物多様性の変更としない場合系統的損失を明らかに
Science
環境破壊で生物の多様性が危ぶまれているんだが、この研究によれば世界的な規模で多様性は失われていないようです。しかし、多様性は維持されているものの、それぞれの生態系で生物種の構成が変化しているらしい。生物ってのは、それほど柔なもんじゃない代わり、環境変化に敏感に反応する、というわけです。


アゴラ編集部:石田 雅彦