米連邦公開市場委員会(FOMC)、予想通り特に変更はありませんでした。テーパリングを継続しつつ長きにわたる低金利政策の維持をあらためて表明しています。おかげで、ダウ平均は終値ベースで過去最高値を更新して引け。いやはや、イエレン議長と米株は本当に相性がいいですね。
▽FOMC声明文の主な変更点とポイント
【景況認識】
前回:「経済活動は冬季に悪天候を一部反映して鈍化した」
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今回:「冬季に急速な鈍化を示した後、足元は悪天候の反動で回復しつつある」
※米3月ISM製造業景況指数が2月の分岐点割れ接近から持ち直し、米4月消費者信頼感指数も2008年1月以来の高水準近くを維持し、ベージュブックでも景況判断を前回の「控え目かつ緩やかな拡大」から「加速した」へ上方修正。
前回:「家計支出と企業の固定投資は拡大し続けた」
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今回:「家計支出は拡大ペースが一段と加速したようにみえる」
※米3月小売売上高は9ヵ月連続で増加しただけでなく、2012年9月以来で最大の伸びを達成。
前回:「家庭支出と企業の固定投資は拡大し続けた」
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今回:「企業の固定投資は小幅減少した」
※米1~3月GDPで企業の設備投資、固定投資は減少。
【統治目標の遵守について】
主な変更なし。経済および労働市場のリスクは均衡、インフレが2%以下で推移するなら経済活動にリスクも、中期的には回復を予想。
【量的緩和策について】
委員会は引き続き米国債、住宅ローン担保証券それぞれ50億ドルずつ合計100億ドルの減額を決定。
【政策金利について】
インフレ目標値2%を達成した場合でも、労働市場や金融動向などを考慮しながら低金利を長きにわたって維持するとも表明。
【票決結果】
全会一致。前回はミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁のみ、2%のインフレ目標達成後も低金利を維持するとの見方に反対票を投じた。
FOMCはノーサプライズで、トレーダーもこの笑顔。
(出所 : CNBC)
▽FOMC声明文レビュー
4月FOMC声明文は前回分をほぼ踏襲していたため、エコノミストのレビューはあっさりしたものが多かった。とはいえ、非公開で「中期的な金融政策」を協議した事実が明るみになっており議事録で全容が明らかになる可能性をはらみます。6月FOMCには中央銀行の大物フィッシャー次期FRB副議長がデビューを飾る見通し。ノーサプライズでホッとできるのも、今だけかもしれませんね。
・バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミスト
FOMC声明文は1~3月期国内総生産(GDP)に則し、経済活動が「急速に鈍化」した後で成長が加速したと説明した。家計支出の好調ぶりと企業支出の小幅減少に言及。住宅市場の評価は据え置いた。その上で、予想通り予想通り100億ドルの追加減額を行った。当方は引き続き10月FOMCでのテーパリング終了宣言、および2015年半ばの第1弾利上げを予想する。
・スターン・アジーのリンゼー・M・ピエザ米主席エコノミスト
FOMC声明文は、景況判断の一部を修正した程度でほぼ変更しなかった。恐らく政策意図をあらためて強調したかったのだろう。3月FOMCでは政策金利見通しやイエレンFRB議長の記者会見にかく乱され、ハト派寄りなFOMC声明文のトーンが重要視されなかった。委員会は根本的に緩和寄りのスタンスを維持すると見込む。
・JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト
FOMC声明文は景況判断以外はほぼ変更なく、粛々と100億ドルの減額を決定した。特筆すべきは、FOMC会合とは別に、29日朝に米連邦準備理事会を開き「中期的な金融政策」を協議したとの発表。前回は2011年4月と6月のFOMC前に開催されており、3週間後に公表される議事録で新たな出口政策の手順とその考え方が示されうる。
なお2011年4月FOMC議事録で明らかになった出口政策の手順は、以下の通り。
1)Fedの2大目標である最大限の雇用と物価の安定に沿ったガイダンス発表
2)システム・オープン・マーケット・ アカウント(SOMA、公開市場操作向けの口座)のポートフォリオを削減、償還資金の再投資停止を①エージェンシー債、②米国債──の順に実施
3)FF金利誘導目標を引き上げ(リバースレポやターム物預金を補助的に活用し超過準備金を吸収)
4)経済および金融市場の動向に対応しながら資産を売却(エージェンシー債につき1~2年程度で残高ゼロを目指し、保有資産を5年程度かけて米国債だけに戻す)
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は声明文公表後、Fed番のジョン・ヒルゼンラス記者とビクトリア・マクグレン記者の連名の記事を掲載。債券購入枠を100億ドル減額とともに、声明文における景況判断の修正を伝えた。
FOMC声明文の前に発表された米1~3月期GDP速報値は、残念な結果でした。
米1~3月期国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率の0.1%増と市場予想の1.2%増を大幅に下回りました。前期の2.6%増から格段に伸びを下げ、2011年4~6月期以来プラス成長に転じてからもっとも低い水準に並んでいます。
項目別の主なポイントは、以下の通り。
・民間投資が6.1%減と2012年10~12月期以来のマイナスに反転。特に企業の設備投資を示す機器投資が5.5%減と2012年7~9月期以来の初めて減少。固定投資も2.8%減、非住宅投資も2.1%減とそれぞれ1年ぶりにマイナス。構造物投資のみ0.2%増と前期の1.8%減から改善した。
・輸出が7.6%減と落ち込み、純輸出の寄与度は0.83%のマイナスと1年ぶりにネガティブ反転した。
・住宅投資も寒波の影響で前期の7.9%減に続き、5.7%減。
・在庫投資は前期の1117億ドル増から874億ドルへ伸びを縮小。
・政府支出は0.5%減と前期の5.2%減から下げ幅を縮小。連邦政府が防衛費の下げ幅を狭めたため0.7%増と2012年7~9月期以来の増加に転じたものの、州・地方政府が1.3%減と1年ぶりにマイナスに転じた。
・GDPの7割を占める消費は3.0%増と、市場予想の2.0%増を大きく上回ったが、前期の3.3%増には届かず。耐久財と非耐久財は伸び悩みも、サービスが4.4%増と2000年4~6月以来の高水準を示現。大寒波の影響で光熱費が支えたほか、医療保険制度改革(オバマケア)の施行によりヘルスケアが統計を開始した1947以来で最高を遂げている。
インフレ動向をみると、GDPデフレーターは市場予想および前期の1.6%を下回り1.3%の上昇となり、3期ぶりの低い伸びにとどまりました。コアPCEデフレーターは、前期に続き1.3%の上昇。市場予想の1.2%を上回っています。ただ米連邦公開市場委員会(FOMC)のインフレ目標値「2%」から、あらためてかい離をみせました。
大和キャピタル・マーケッツのマイケル・モラン米主席エコノミストは、今回の結果を受け「消費のうちサービスが強い伸びだったものの、寒波の影響で暖房費を含む公益が押し上げたほか医療保険制度改革(オバマケア)始動に伴いヘルスケアが突出している」と説明していましす。寒波の反動で強含んだ3月以降、4月にどれだけモメンタムを維持できるかがFOMCの政策動向を捉える上でカギとなるでしょう。1~3月期にさえなかった企業投資や住宅投資も、回復の芽を伸ばすか注目ですね。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年4月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。