障害者は防災とまちづくりのイノベーター

本山 勝寛

先日4月22、23日に仙台で「障害者も参加する防災:知識を通じて固定観念を変えよう」アジア太平洋地域会議(仙台会議)を開催した。勤め先の日本財団と国連アジア太平洋経済社会委員会、国際リハビリテーション協会の三者で共催し、18カ国から130名の政府代表や障害者団体代表らが参加するなか、障害者と防災をテーマに闊達な議論が交わされた。会議の概要は朝日新聞などでも報道された通り。

障害者と防災をテーマにアジア各国の障害者や防災担当者らが話し合う会議が23日まで、仙台市青葉区で開かれた。東日本大震災で障害者の死亡率は全体の2倍に達した。その教訓を踏まえ、障害者の視点に立った防災に国際的に取り組んでいくべきだ、との提言をまとめた。
災害時に障害者をどう守るか、という課題は、国際会議で真正面から取り上げられることはあまりなかった。提言によって、来年3月に仙台市で開かれる国連防災世界会議での議論を促す。

この「障害者の死亡率2倍」というデータは、東日本大震災で初めて国際的に提示された調査だ。災害避難時に障害のある方が困難に直面するであろうことは容易に想像できるが、これほどはっきりと数値に表れたことに、日本国内のみならず国際的に大きな衝撃があった。そして、防災を専門とする国連機関や各国政府の担当部局もこれまで障害者の視点が欠け、十分ではなかったことが明らかになってきた。

まだ一般的にはあまり知られていないかもしれないが、来年3月には、10年に1度の国連防災世界会議が仙台で開催される。前回の兵庫に続き、日本が東日本大震災の教訓を世界に発信していくという意気込みでホスト国として手を挙げたのだ。あれだけの大きな被害と犠牲者を出し、日本にとって決して忘れられない3・11。津波対策の防波堤や、原発と防災など提起すべき点は様々あるだろうが、「障害者インクルーシブな防災」は、日本から発信すべきテーマであり、発信できる重たい教訓であるように思う。

そして、会議のなかでも議論されたのだが、障害者が単に災害時に援護を受けるべきだという視点に留まるのではなく、障害者にとっても災害に強いコミュニティ・社会はお年寄りや子ども、そして全ての人にとってもそうなのだという観点が重要になってくる。さらに、そういった観点を具現化させるには、支援を受ける対象としてではなく、防災計画の策定や避難訓練など全てのフェーズに障害者も主体的に参加できる仕組みが必要だ。

私は各国の様々な障害のある方々にお会いするなかで、障害者はより暮らしやすい社会を実現させるために隠されたニーズを顕在化させる「イノベーター」なのではないかと感じるようになってきた。

たとえば、エレベーターはベビーカーユーザーである乳幼児の親には今や必須とも言える社会インフラだ。駅にこれほどまでエレベーターが設置されるようになったのは、障害者の方々が時には身を呈して階段をよじ登ってまでして、命懸けで社会に訴えてきたからだ。これが乳幼児をもつ親の声だけでは、そういった社会は実現できていなかっただろう。そして、既に本格化しつつある超高齢化社会のための社会整備も障害のある方々が先頭を走ってきたと考えられる。

世帯主が65歳以上の高齢世帯は2010年時点で31.2%、2035年に40.8%と4割を超えると推計されている。国民の大半が高齢者という社会のなかで、次の大災害は必ずいつかやってくる。そのとき、一人でも尊い命を守り、避難生活のなかでの関連死を防ぐためにも障害者のイノベーターとしての視点を災害に強い社会つくりにも取り入れるべきであると強く思うのである。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。