先日ブログに書いた勉強のできる」東大生が、社会に出て「成功できない」理由というエントリーに、言論プラットフォーム「AGORA」上で大西宏さんからこんなコメントを頂きました(リンク先は元のブログページです)。
内容に関して勘違いをされているようなので、もう少し説明しておきたいと思います。
まず、申し上げたいのは、東大出の勉強ができる人がすべて社会で成功しないと言っている訳では無いということです。全員のことを調べたり、知っている訳でもありません。私がクラスメイトや同窓生を見て、感じたことを書いており、当然例外はあると思います。
私が言いたかったのは、東大がダメだとか他の大学が良いとか、大学の比較の話ではないのです。
また、ビジネスの成功が何を意味するかは、人によって違いますが、私はベンチャー企業のように「ゼロから1を生み出す」ことこそ、ビジネスの成功だと思っています。世の中に新しい価値を提供する意義のある仕事です。このような事業創出に関して、「勉強ができる」だけでは、成功しにくいのではないかという意見です。
大西さんは、
一部上場企業というと、内部調整が極めて複雑で、またエネルギーが必要だと思いますが、その一部上場企業の社長の出身大学でトップは慶応で、2位が東大なので、複雑な内部調整能力は、「勉強ができる」人のほうが持っているのかもしれません。
ところが企業全体の社長となると話は違ってきます。日大が圧倒的に多く、2位に慶応、3位に早稲田、4位が明治、5位は中央大です。ちなみに東大は16位にすぎません。卒業生数の違いもあるのかもしれません。
と書いていますが、そもそも大学別の社長の数を比較したところで、卒業生の数が違いますから、大西さんご自身もお気づきの通り、意味の無いことです。そもそも日本の大学同士で比較しても、大差はありません。
それに、大手企業に入社して上場企業の社長になることは、ベンチャーを立ち上げるような「ゼロから1を生み出すこと」ではありません。私が以前のブログで書いた「ビジネスの成功」とは少しずれているのです。
「勉強ができる」というのは、記憶力の良さやあきらめない根気、それに物事に優先順位をつけて効率よくこなす力といった点で優れていることを示す尺度だと思います。ビジネスの成功とは無関係ではなく、大いに関係するファクターだと言えます。
しかし、ビジネスは人間と人間がぶつかって進んでいくものです。高性能のロボットは、いくら優秀であってもビジネスを展開していくことはできません。
センセーショナルなタイトルが誤解を生んだのかもしれませんが、「勉強ができることは、ビジネスの成功の十分条件ではない」。これが一番言いたかったことです。
いつもユニークで有益なコンテンツを提供されている大西宏さんの誤解が解けることを願います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。