リフレ派の原田泰氏が、バラマキ派の藤井聡氏を批判している。藤井氏は部分的には正しいが、原田氏は全面的に間違っている。
藤井氏は「浜田宏一氏や原田泰氏のいうマンデル=フレミング・モデルが正しいとすれば、公共事業で今ごろ金利が上がっていなければならないが、そういう現象は起こっていない」という。それは彼のあげている図の通り正しい。量的緩和で円安になって貿易黒字が増えるというMFモデルによる浜田氏の主張も、その逆になった。
ところが原田氏は「公共投資で景気を刺激したいのなら、同時に金融を緩和しなければ効果はない」という。それなら、公共事業の効果はあったのではないか。彼は「建設工事費や建設労働者の賃金が上がっているということは、その分野ではもはや資材や人は余っていないということである」というが、人手不足になったのは公共事業のおかげだ。
いま起こっている人手不足の原因は、日銀も認めるように、供給力の不足による需給ギャップの縮小である。特に震災の現場で大規模な復旧工事が続いていることが単純労働者の需給をタイトにし、サービス業の賃金が上がっている。よくも悪くも、財政政策はきいたのだ。
他方、原田氏のいう金融政策の効果なるものは何もあげられておらず、「実証的な方法によって決着をつけるのは、かなり複雑な仕事になる」という言い訳が書いてあるだけだ。物価が上がった原因は、彼も認めるように公共工事の人手不足と円安とエネルギー価格の上昇で、金融政策の効果ではない。
要するに藤井氏が指摘するように、アベノミクスできいたのは「第二の矢」の公共事業だけなのだ。これは日銀も同じ認識である。だから景気をよくすることだけが目的なら、際限なくバラマキをやればいい。もちろんそれが多くの副作用をともなうことは原田氏のいう通りだが、それはきかなかったという論拠にはならない。