憲法改正までの道のりがいよいよ見えてきたというお話 --- うさみ のりや

アゴラ

通称「国民投票法」、正式名「日本国憲法の改正手続きに関する法律」の成立が間近ということで、いよいよ憲法改正にむけた道のりが見えてきています。今後の政治スケジュールを見ると2016年7月に参議院選挙、同年12月に衆議院選挙が予定されているのですが、ここで公明党との調整がつけば7月の時点で衆参同時選挙が行われて憲法改正に関する論点が問われることになるのでしょう。今回の法改正ではこれから4年の間に諸制度の論点を整理しつつ政治教育を進めて投票年齢を20歳から18歳に引き下げることを予定しているので、早ければ2018年には憲法改正、ということになります。なお憲法改正の手続きに関しては以下の図の通りです。

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(総務省HPを参考に海老沢ゆき氏作成)


そんなわけで、一昨日の言論アリーナでは例によって海老沢サンをアシスタントに慶応大現役学生若干20歳の自称政治活動家の青木大和クンを呼んで、若者と政治参加と憲法改正の個別の論点について議論しました。大和クンは高校時代にアメリカに留学していたのですが、その際に「毎朝国旗に対して忠誠を誓わせられる」だとか「政治に関して語れないとバカにされる」だとか「試合の前で必ず国歌斉唱がある」だとか、日米の学生の政治に関する意識の差に衝撃を受けたそうで、日本に帰ってきても一万人規模で未成年の模擬選挙したり、国会議員との学生100人で意見交換の場を設定したりと言った活動をしています。私が中高時代を振り返ると歴史の時間にどっぷり左翼思想に染まった教師に「国とは悪いものだ」というような教育を受けたので、彼我の差を大変感じた次第ですが、その辺の詳細は動画をご覧になってください。なかなか面白いと思います。

憲法改正に関しては自民党憲法改正案を参考に大きな論点として

  1. 国防軍規定(憲法9条改正)
  2. 緊急事態条項(新設)
  3. 憲法改正要件の緩和

を取り上げて、色々と話したわけですが、一つ憲法改正要件の緩和について間違ったことを申しまして反省しております。動画中は「アメリカでは憲法改正は両院の4分の3の賛成で発議」と申しましたが、「両院の3分の2の賛成で発議で、全州の地方議会の4分の3の承認で効力を発する」というのが正しい情報でした。勉強不足ですみません。ちなみにフランスは「両院の過半数の賛成で発議で、その後国民投票or両院合同会議の5/3以上の賛成で効力を発する」という具合でして、「両院の3分の2×国民投票の過半数の賛成」という日本の憲法改正要件は世界でもトップクラスに改正しづらい憲法であることは間違いありません。

話していて感じたことなのですが、憲法9条に関しては結構世の中に誤解が広まっている気がしていまして、現在の憲法9条の問題というのは「9条があるから全ての戦争を放棄した」とか「軍隊を持てない」とかいうことは決してありません。この辺も動画だと時間がないのでかなりざっくりと誘導的な説明をしてしまったのですが、自民党の改正案でも憲法9条の一項はベースとしてはそのままで残しつつ、解釈の幅が広すぎる2項に関しては全文書き直して自衛権の存在を確認する形にして、新たに「9条の2」を新設して国防軍についての条項を設ける形になっています。その内容自体は今安倍政権で議論になっている集団的自衛権の解釈改憲がなされてしまえば、後追い的な内容になるわけで(除く軍事裁判所の設置)、その点に関して「日本を新たに戦争をできる国にする」というような改正を自民党が意図しているわけではないことをメディアもきちんと伝える必要があるのではないかと思う次第です。現状においても憲法9条は自衛のための戦争は放棄しているわけではないと読めますし、集団的自衛権の不行使に関しても条文に明記しているわけではなく、あくまで勝手に政府がそう解釈して自分を縛っているに過ぎません。問題は解釈の幅がありすぎる条文だと個人的には思うわけです。

自民党改正案

緊急事態条項に関しては「大規模自然災害や内乱や戦争等の緊急事態には国会を通さずに総理大臣が法律を制定できる」というその激烈な内容に反対する意見が多かったわけですが、これも緊急事態に関する供えが必要ということに必ずしも反対するわけではなく、むしろ間接的に選ばれたに過ぎない総理大臣にそれだけの権利が固まることを恐れる人が多かったのではないかと感じた次第です。緊急事態条項を設けるなら、国民から直接信任を受け総理とは切り離された大統領的立場の存在が必要な気がします。っていうか私がそう思っているから、そう感じただけかもしれませんが。

他にも地方分権に関する議論や参議院の在り方に関する議論に花が咲いたわけですが、いずれにしろ早ければ4年後に憲法の改正がなされるかもしれないわけで、それを考えるキッカケとして暇なときに酒の肴としてでも是非ご覧になってく見てください。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2014年6月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。