先日、厚生労働省が2013年の合計特殊出生率を含む人口動態統計を発表した。概要はNHKの報道を抜粋すると以下の通り。
厚生労働省によりますと、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は、去年は1.43で、前の年よりも0.02ポイント上昇しました。出生率が上昇するのは2年連続です。
都道府県別で最も高かったのは▽沖縄で1.94、次いで▽宮崎が1.72、▽島根と熊本が1.65となっています。最も低かったのは▽東京で1.13、次いで▽京都が1.26、▽北海道が1.28となっています。
年代別では、30代で上昇している一方、20代で減少傾向が続いています。
また、第一子を出産した平均年齢は30.4歳で、過去最高を更新し、晩産化が進んでいます。
一方、去年生まれた子どもの数は102万9800人と前の年よりおよそ7400人減って、これまでで最も少なくなりました。
大方、予想通りの結果だといえよう。政府の少子化対策で出生率の減少トレンドには歯止めがかかっているものの、大幅増まではいかず、晩婚晩産化とともに出産可能な女性の人口自体が少なくなっていることから、出生数および人口の減少は避けられないといった結果だ。
私が今回の統計発表で注目したい点がいくつかある。一つは東京の出生率。全国で最低であることに変わりはないが、2013年の出生率1.13は2012年の1.09よりも0.04ポイント、2011年の1.06よりも0.07高く、全国平均の増加率を上回っている。現在の日本は、出生率の低い東京が比較的出生率の高い地方の若年層をブラックホールのように吸い込んでいる状況にあり、東京の出生率向上は少しだけ明るいニュースだ。
もう一つ都道府県別の動向で注目すべきは福島県である。2012年の1.41から2013年は1.53と0.12ポイントも増加している。これは震災と原発事故による放射線の影響による不安などから産み控えがあったのが、徐々にその不安が軽減されつつある表れなのかもしれない。(もちろん、今もなお多くの方々が不安を抱えながら暮らしていらっしゃることも現実であることには変わらないだろうが。)この福島の出生率1.53は、比較的出生率の低い東北で最も高く、東日本全体でも福井に次ぐ数値だ。震災による哀しみと放射線による不安のなかでも、未来をみつめ子どもたちに希望を託したいと願う福島の方々の静かなる強さを感じるのは私だけだろうか。
最後に注目したいのは離婚数の推移だ。2012年の235,406件から2013年は231,384件と、年間4千件、1.7%減少した。日本の離婚数は2002年の28.9万件まで一貫して増加していたが、近年は減少傾向にある。もちろん、離婚が時に最悪の状況から脱する解決策にもなりうることを考えると、一概に避けるべきものとは言えない。しかし、子どものことやシングルマザーの貧困の現状を鑑みると、離婚数の減少は概してよい傾向であるといえる。婚姻世帯が増える(減らない)ということは出生数減少の歯止め効果も期待できる。せっかく子どもが産まれても、夫が家庭を省みらないあまり夫婦が産後クライシスに陥り離婚に至ってしまうというケースが多いことも示されているが、そういった不幸が少なくなるよう、男性の家事育児の責任共有を企業側が促していくなど、社会環境を整備していくことも重要だ。
政府は出生率向上と人口維持のために、少子化対策を強化する方向性を打ち出している。少子化問題は今や国家の危機である。あらゆる政策を総動員し、子どもを産み育てやすい社会をつくっていく必要がある。
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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。