長く着実に続けられる経営の極意 --- 岡本 裕明

アゴラ

プロスポーツ選手で生涯獲得賞金が多いのはやはりプロゴルファーでしょうか? 選手生命はそれこそ10代後半から60代でもやっている人もいます。40年以上も現役でしかも年齢差をあまり感じさせないスポーツは他にないでしょう。野球やサッカー、相撲は選手生命15年前後で引退した後の道も割と限られている気がします。確かに華やかな世界ではありますが、散るのも早いものです。


経営の世界でも雑誌に取り上げられるような商品やメニューを真似したり、流行に乗ってひと山当てるというスタイルの人も多いでしょう。一方で堅実で案外目立たない人の方がしっかり稼いでいたりするものです。というより、税務署が怖いから意識的に目立たないようにしている人もいます。どちらがよいのか、生き方や個性の問題もあるので一概には言えませんが、長期安定の方が最終的にはプラスのような気もいたします。

日経ビジネスに「ブランド2014 老舗ブランド再点火」と題する特集がありました。その中で目を引いたのが赤城乳業の「ガリガリ君」のストーリーでしょうか? 同社は知る人ぞ知るユニークアイスの会社。「ラーメンアイス」「いくら丼アイス」という普通ならあまり手が伸びない商品で有名でありました。そんな同社も最近はおとなしくしていたようですが「冒険していない」という第三者からの声に発奮。「コーンポタージュアイス」「ガリガリ君リッチ クレアおばさんのシチュー味」を売り出し、2013年は同社最高の4億8000万本も売ったというのです。この数、日本国民全員が昨年4本ずつ口にした本数なのですから驚きです。

しかし、このガリガリ君なるものがメディアを飾った記憶はほとんどないと思います。私も見た覚えがありません。同社はSNSを含むウェブでの情報発信はしておらず、プレスリリースのみ。しかしその後、口コミで広がったというのです。但し同社が継続してやってきたのは小ネタを年間100本もだすという技でした。「真冬の試食会」、「特典のないゴールド会員証」などわけが分からないけど、一応、目を引く小ネタの楽しさなのでしょう。

人気商品ほど行列は割とすぐに短くなる気がします。テレビなどで取り上げられる女性マーケットをターゲットにしたものは実に足が早く、洋服の流行と同様、旬をさっと掴まないと果実を手にすることはできません。たとえば今ならパンケーキなのでしょうか? 5段重ねだろうが、どれだけおいしそうなトッピングを載せたとしてもパンケーキが人気メニューとして生き延びるのはせいぜいあと半年から1年とみています。なぜなら、何ら目新しい商品ではないのです。同じことは数年前のシュークリームもそうでしたし、マッコリブームもどこかに行ってしまいました。

ラーメンブームで北米にも出店ラッシュが続きます。ここバンクーバーにもこれでもか、というぐらい店舗数が増えてきていますが、私はブームもそろそろ終わりが近いとみています。理由は白人マーケットにラーメンがさほど食い込んでいるのかという疑問です。実態は北米在住のアジア系の人がブームの主導でマーケットの奥行きは案外浅いという読みがあるのです。

猫舌でアルデンテが苦手な白人が腰の強い日本のラーメンを食べこなせるのか、という根本的疑問もあります(ラーメンの汁に氷を入れる猫舌ぶりはあまり知られていないでしょう。あるいは北米のパスタはまずいと日本人が思うのは欧米では一般には茹で過ぎぐらいが好みだからであります)。

長期で稼げる着実な経営とは人がやっていない領域で計算された「うまみのエキス」だけを吸い上げるシステムを作り上げることではないかと思います。「うまみエキス」はたくさん出ない一方で追随者を許さないユニークさを作ればその商品のライフはより長くなり、果実もより立派なものになります。

上述の赤城乳業のマーケティングはいわゆるファン層をしっかり作り、コツコツとヒットを打ち続けるというスタイルかと思います。メディアで取り上げられ、爆発的ヒットで販売一時中止となる商品も散見できますが、じわっとしたヒットの方が話題性には欠けるかもしれませんが、ビジネスとしては成功しているものなのです。

長期で安定して稼ぐにはまず、あまり足元がふらつかず、自分のコアを作ることかと思います。そのコアさえぶれず、しっかりビジネスをしていれば最終的にはビジネスのウィナーになれるのではないでしょうか? 起業のコツとはこういうところにもあるかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年6月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。