やってしまった? 都議会のおせっかいおじさん --- 海老澤 由紀

アゴラ

都議会の野次が問題になっているようです。

女性都議に「産めないのか」

野次の内容は程度が低いですし、個人的なことを公の場所で、しかも無関係な人がいろいろ言うのは問題外です。その上で、いったん議会の野次の話から離れます。

現場にいた方があれだけ憤慨しているのですから、悪意のある野次だったことは間違いないでしょう。ただ、悪意が無い言い方、ふざけた言い方だったら、そういう内容の発言をする方は、昔はたくさんいましたね。昭和の高度成長期に、近所には「おせっかいなおじさんやおばさん」がたくさんいました。


昭和50年の女性の平均初婚年齢は24.7歳、第一子の出産年齢は25.7歳、離婚率は約4%でした。昭和55年の30代の未婚女性の割合は7.3%でしたが、平成22年には29.3%になっています。

30歳代後半で独身の方は大変珍しく、多くの方は結婚して、子供がいてという状況だったはずです。近所に独身で30代を迎えた方がいれば、おせっかいな人がお見合い話を持って行ったり、影で「何か問題があるのかしら?」などとうわさ話をしました。

それに、今や4人に1人が離婚しますが、昔は離婚したというとそれは大騒ぎでした。独身だったり、離婚して家庭が無い男性がオピニオンリーダーになっている現在は、昭和の時代とはだいぶ変わったと思います。

結婚していても、子供がいないと聞くと、「子どもの作り方教えようか?」などど、しょうもない冗談を言うおじさんがよくいたものです。そういうおじさんは、おせっかいなだけで悪気は無いのですが、今だったら大問題になってしまいます。

おせっかいおじさんも、「セクハラ」という新しく登場した言葉に駆逐され、今ではお酒をたくさん飲んでたりしない限り、そういう発言をすることは無くなりました。

出生率を上げないとまずい。出生率を、政府が掲げた2.07(人口の増減が無い比率)まで戻そう。

そう思うならば、少なくとも、20代、30代の人の結婚・出産に対する「空気」は、昭和と同様なものにならないと厳しいはずです。合計特殊出生率が2.07以下になったのは、昭和49年です。

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(平成24年厚生労働白書)

生物学的なことを考えれば、やはり30代になったら、女性の多くの方が子どもをすぐに産む必要があります。

森三中大島さんの妊活休業から考える高齢出産の厳しい現実

出生率のことだけを考えるなら、仕事が云々、個人の選択、男女均等、ライフスタイルがどうだとかいうことは言ってられず、女性の年齢だけがとてもシビアな問題をもたらします。

おせっかいおじさんおばさんの復活を望んでいるわけではないのですが、若者自体にある程度の自覚は必要になりますし、もっともっと若いうちに出産に対する教育を行うことが必要とされるでしょう。

さて、都議会の話に戻って、「そんな議員を選ぶ有権者が」という意見も多く見かけます。確かにその通りですが、ネットに意見を書き込むこともない中高年層の方の中には、「産めないのか」は論外としても、「自分が早く結婚すればいい」には「その通り」と感じる人が意外と多いのではないでしょうか。

野次を飛ばした人も、今では「しまった」と思っているはずですし、責任は取らないといけませんが、もしかすると普段はただの「おせっかいおじさん」だったかもしれません。当選が若い人以外の投票で決定する現状の選挙制度を考えると、そういう方が当選するのも、ある程度当然の成り行きなのかも。

今回の件に関して、野次を肯定することは100%できません。かばうつもりもありませんが、内容について「その通りだ」と感じる人が一部存在するということ。空気的には、そういう発言が容認されていた時代のように、ある程度の年令になったら結婚して子どもを産むのが当然とならないと、少子化の根本的な解決は難しいということは、この際、今一度考えるべきかもしれません。

若いうちに子どもを産むという空気が作れないなら、少子化問題は、単純な人口減少問題、高齢化問題になっていきます。もし、それでも「早く子どもを産め」と言うことが時代錯誤だというならば、少子化問題も時代の変化として受け入れて、人口減少問題、高齢化問題として処理するべきなのです。

議員の質問内容が、少子化に関することだったらしいだけに大変残念ですが、少子化を本気で考えるということは、こうした人権の問題になりやすいことについて真正面からぶつかって、空気を変えることも含んでいるということを考えさせられました。

ご参考:いまやらなくていつやる!日本の少子化対策

海老澤 由紀
政治活動家
@ebisawayuki


編集部より:この記事は海老澤由紀氏のブログ「海老澤由紀ブログ」2014年6月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった海老澤氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は海老澤由紀ブログをご覧ください。