都議会セクハラ野次問題の裏では、黒田官兵衛も真っ青な権謀術数が渦巻いているとの情報が与野党のあちこちから漏れてくる今日この頃です。あー、やだやだ。人間の性というのは四百年経ってもあまり進化しませんね。
※半世紀を超えた大河ドラマ(NHK「大河ドラマ」公式サイトより)
ところで、今年の大河ドラマの「軍師官兵衛」は視聴率の伸び悩みに直面していた中で回復傾向にあるようです。松寿丸が元服したかと思いきや、「視聴率クラッシャー」のガッチャマンご登場という展開に黒田官兵衛ファンとしては、ドキをムネムネさせながら、お昼前の視聴率発表を、固唾をのんで見守っているわけですが、こちらの産経新聞の記事でも指摘されている通り、近年の大河は一度視聴者が離反すると回復不能だっただけに、数字が盛り返してきたというのが面白い。官兵衛の生涯最大の危機である有岡城の幽閉シーンに始まり、さらには前半最大のクライマックスである「本能寺の変⇒中国大返し⇒山崎の合戦」という、歴史ファンなら気にあなる劇的な展開がみえてきたこともありましょう。
それで都議会の件があった頃でしたか、三谷幸喜さんが脚本を手掛ける再来年の大河ドラマ「真田丸」の主人公に堺雅人さんが決定したことがスポーツ紙の既報通りに発表されました。これにより、「半沢直樹」続編の可能性を心配してしまうわけですが、よくよく考えると、来年は長州藩が舞台の「花燃ゆ」ということで、21世紀に入ってからの大河作品は2001年の「北条時宗」の後ずっと「戦国⇔幕末⇔たまに源平」という無限ループが硬直化しております。しかもその多くは戦国ものに偏っており、所詮、視点を軍師なり、家臣なり、お姫様なりに変えてはいるものの信長、秀吉、家康を取り上げているだけに過ぎず、「軍師官兵衛」の視聴率回復もやはり三英傑のブランドの影響と言えなくもありません。
もちろん、NHK側も新機軸を打ちたてようとした事例はあって、南北朝時代(「太平記」)とか奥州藤原氏(「炎立つ」)とか応仁の乱(「花の乱」)とか、あるいは明治期の秩父事件(「獅子の時代」)とかマニアックな題材にもチャレンジしてはいるんですが、大河ドラマ全盛期の時代にあっても苦戦してしまうのが辛いところ。プロデューサーもサラリーマンですから、お家の名誉を賭けた作品で決定的な失敗を残せば左遷も避けられないわけで、ついつい計算が立ちやすい「戦国⇔幕末」路線に寄りかかってしまうのも人情かもしれません。
しかし、歴代の大河で高視聴率を叩き出した作品といえば、たしかに戦国ものが多いというジャンル的な要因も大きいとは思うのですが、やはり名うての役者さんの演技だとか、スリリングな脚本であったりとか、その時代に最高の映像技術の粋を集めたり等の一流の結晶だったような気がします。で、実は今年は大河が50年を超えた記念だかで歴代人気ナンバーワンの「独眼竜政宗」を土曜夕方にBSで再放送中。録画で観ることが多いですが27年ぶりに鑑賞しております。改めて配役のマッチングが絶妙で、演技のうまさがけた違い。ベテラン陣は、それぞれが割り当てられたキャラクターを自分に引き寄せて完全の自分のものにしている。大滝さんの虎哉和尚、原田さんの最上義光、岩下さんの義姫、いかりやさんの鬼庭左月、勝新さんの秀吉……昨日は、北大路さんの輝宗が人質にとられながらも、「政宗、天下を取りとうないのか!」と政宗を叱りつけて、鉄砲隊に撃たせ、自らを犠牲にするシーンは涙なしにはみられませんでしたね。「独眼竜政宗」は確かに戦国ものではあり、中盤からこそ秀吉、家康との絡みが出てきますが、やはり東北地方が主な舞台なので新鮮味も大きかった。あとはなんといっても当時売出し中だった渡辺謙さん自身が政宗とともに「全国区」の役者さんに成長するのと重ねあわせて視聴者が見ることで共感しやすかったんじゃないでしょうか。
キャスト、ストーリー、スタッフが120%の総合力を発揮しさえすれば、一見馴染みのない時代や題材であっても、視聴者の心に響くのではないかと思うわけです。そういえば、「春日局」は主演が大女優・大原麗子さんだったものの、題材になじみが薄く初回平均は14.3%と低空飛行でしたが、やがては平均で32.4、最高で39.2%という大上昇を遂げたケースもあるのでイノベーションへのチャレンジを続けて頂きたいと期待します。ちなみに、その前に「真田丸」の真田昌幸役は、三谷ファミリーにして、大河ドラマにもゆかりの深い役所広司さんを個人的に希望します。
ではでは。
※視聴率の数字はビデオリサーチを参照
新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ