レゴはなぜ世界で愛され続けているのか

本山 勝寛



私は塾も家庭教師も通信教材(進研ゼミやZ会)も一切やったことがないが、地頭を鍛えるのに役立ったと思っている「三種の神器」だけはかなり使い込んだ記憶がある。すなわち、レゴ、学習マンガ、そしてトランプ(特に大貧民)だ。以前の記事「子どもの学びを加速するエデュテインメント10選」でも書いたが、これらをひたすら楽しんでいるうちに、いつの間にか数学や図形処理、歴史が得意になっていた。


20年、30年が経ち、今では子どもたちと一緒にレゴを楽しんでいる。特に5歳の息子はかなりレゴ好きで、幼児用の大きめのブロック「デュプロ」を巧みに操り、動物や爬虫類、昆虫や乗り物などをつくり親子で対決するのが大の楽しみになっている。

そんな親子二代以上で愛されつづけているレゴだが、今や年間売上4500億円、営業利益1500億円、玩具メーカー2位の世界的企業に成長している。タイヤの生産量もブリジストンを抜いて世界一だとか。順調に成長してきたのかと思いきや、実は2003年には赤字を出すほどの低迷期も経験している。デンマークのベルンという片田舎から生まれたレゴ社の創業のDNA、そしてゲームやPCといった刺激的な玩具が子どもの人気を博すなかでブロックから離れた全く新しい商品のチャレンジが逆に裏目に出て失敗した低迷期、その後創業のDNAに立ち返りながらも効果的にイノベーションを実現しV字回復を果たした近年の復活劇をまとめたのが、新刊『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』だ。

レゴファンとしてレゴの歴史を知るという意味でも、今やアップルと比されるほどブランド回復を果たした企業の経営書としても楽しめる。興味深いのは、デンマーク語の「よく遊べ」”Leg Godt”からLEGOという社名が生まれ、創業時から「子どもには最高のものを」が企業理念だったこと。今や組立型知育ブロックは他社もかなり多数の種類が出されているが、組み立てたときにカチッとはまり、壊れにくいというクオリティの高さはレゴがピカイチだ。そして、だからこそたくさんのブロックを無限に組み立てて世界を創り出すことができるのがレゴの最大の魅力だろう。

2004年以降の復活劇ではこのDNAに立ち返るとともに、幼児向けのデュプロや、レゴを使ったボードゲーム「レゴゲーム」、レゴとロボットを組み合わせたレゴマインドストームなどが新たにヒットしている。両者とも日本ではまだそれほど普及していないようだが、特にレゴゲームはいずれヒットするのではと踏んでいる。

今後、アジアや新興国で知育玩具市場、エデュテインメント市場はさらに急成長するだろう。そのなかで、レゴがリーディングカンパニーの一つであることは疑いの余地がない。創業のDNAを貫きながらも今後どのようなイノベーションが生まれるか楽しみだ。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。