変化するアジア情勢 ~ 経済雑感 --- 岡本 裕明

アゴラ

恒例のアメリカ雇用統計が発表になったのでそれをカバーする意味で「経済雑感」のタイトルをいつものようにつけておりますが、今回はこの一両日で起きた様々な世の中の動きを中心にカバーしたいと思います。

まず、アメリカの6月度雇用統計は28万8千人の純増で当初予想の21万5千人を大幅に上回り着地。失業率は0.2%ポイント改善し6.1%に、労働参加率は前月変らずの62.8%でした。数字はかなり良くなるだろうと事前想定されていたこともありましたが市場は素直にこれを好感し、ダウは遂に17000ドル台を突破、S&Pも史上最高値を更新しています。一昨日このブログで書かせていただいたとおり、世界で激震となるような問題が生じない限りアメリカ経済はより締まってくるとみています。


ところでカナダですが、冬の間の暗いトーンからようやく抜け出した感じになってきています。各種経済指標も予想を上回るものも出てきており、カナダドルの対米ドルの為替レートも改善過程にあります。TDバンクは為替の長期見通しを変更し、カナダドルが思ったより腰が強いと見直しているようです。

バンクーバーの不動産は活況。特に高額もの(1億円を超える物件)がよく動き始め、3~4億円水準のコンドミニアムも言い値に近い金額で売れはじめています。巷に言われているのは中国人の不動産買い需要が引き続き強く、永住ビザ発行の規制強化にもかかわらずチャイナマネーがかなり入り込んでいるとみられています。よって、中国人の間で資産分散化の動きが強まっているとみられ、これが逆に中国の先行き不安の要素ともなっています。

その中国ですが、北朝鮮をすっ飛ばして韓国を公式訪問したことは歴史的なことだと感じています。一方の日本は北朝鮮とのディールが進み、一部制裁解除の方向となっています。これは当然ながらアメリカも容認しているはずでアジアを取り巻く地図が変わってきたともいえます。

韓国は、というより朴大統領は日本を余程敵対視しているのか、その姿勢をさらに堅固なものにしているようです。特に習近平国家主席からパワーを貰ってしまっては正に躍り上がる気持ちであるはずです。私の印象は習近平国家主席の狡猾さと見て取っています。朴大統領は様々な国内事故が連続して起こり、国内の支持基盤が揺れに揺れていた状態でした。そこに手を差し伸べられればすがりつきたくなるのは当然であります。つまり、習近平国家主席は非常に容易く韓国を取り込んだということです。多分ですが、そのうちにあの時の政策は失敗だったという反省が出てくるはずです。韓国というよりも朝鮮半島の長い歴史がそうでしたから。

ところで中国から4Kテレビが1000ドルを切る金額で発売されたことが話題になっています。勿論専門家は画質などの細かい点で「比較にならない」と斬っていますが、消費者はそうは思わないということには気を付けるべきでしょう。この意味が何を意味しているかといえば中国は確実に技術を身につけてきたということです。そして、極めて大きな内需に支えられ先端技術に肉薄してきているということです。

これによりもっとも先に影響を受けるのは韓国になってしまいます。その場合、国内からのあらゆる不満の声が再び惹起し、手におえない状態になりやしないかと心配しております。

今日のポイントです。地固めする大国アメリカ、中国に対して受動的で振り回されやすい韓国などをみて総合力がモノをいう時代となってきた感があります。日本は独自の道を進むべし、というのが私の見方。但し、足腰が強化されつつあるアメリカとしっかりとした協力関係を結びながらさらにその道をまい進すべき、ということでしょう。日本が変われるかどうかはこれから5年が勝負となります。それは経済や政治だけでなく人々のマインドがどう変わるか、ここにかかってきます。安倍首相のパッションであった集団的自衛権の議論を含め日本が進むべき道を考えるには絶好の機会到来ということでしょう。

話があちらこちらに飛びすぎました。今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年7月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。