ドリアン畑が縫製工場になればバングラデシュの人は幸せになれるか? --- 内藤 忍

アゴラ

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ダッカの2日目は、雨から始まりました。雨季ということで、覚悟はしていたのですが、予想を超える大雨。物件視察はグルシャンにあるコンドミニアムの室内からはじめました。グルシャンはダッカの中心部の一等地。コンドミニアムの価格は急騰しています。

例えば、築10年の中古物件で広さが200平方メートルで、価格は3000万円弱です。造作はしっかりしており、将来の値上がりの可能性もありますが、日本の個人投資家でこれだけの金額をダッカ1カ所に投資できる人は、かなりの勇気と保有資産を兼ね備えた人と言えるでしょう。


カマルパラという新しく開発される予定のあるエリアを抜けて、午後からはアシュリアというダッカより郊外のエリアを視察しました。ここは、住宅地というより工場用地で、日本のアパレルメーカーも続々進出してきている地域です。土地を購入する場合、500万円前後から可能です(広さは、5カタ=約100坪)。バングラデシュ人も個人で購入している人が多く、地元でも期待が高まっていることがわかります。5年~10年スパンで投資できるなら、検討に値するエリアです。

来年には、政府の方針でダッカ市内にある工場はすべて、郊外への移転が義務付けられるそうです。そうなれば、アシュリアへの工場進出のスピードは加速します。また、これから電力供給が安定に向かうことも、アシュリアには追い風です。

アシュリアの帰り道、地元の人が採れたてのドリアンを持ってきてくれました。新鮮なドリアンは、濃厚な甘い香りがあって、果肉はトロリとして柔らかいマンゴーのような感触。フレッシュな味が、病み付きになって、食べ始めるともう止まりません。ここでしか食べられない、最高の味を堪能しました。

アシュリアの開発が進めば、ドリアン畑はきっと縫製工場に変わってしまいます。素晴らしい自然と、そこにいる素朴で純粋な人は、無くなってしまうかもしれません。経済成長によって得られる、物質的な豊かさと引き換えに、消えてしまう大切なものもある。そんな現実を思いました。

しかし、自分たちだけが経済的な繁栄を謳歌し、新興国の人には成長は悪だと押し付けるのは、先進国の人間のエゴイズムです。得られるものと、それによって失ってしまうもの。2つのバランスを考えて、現実的なソリューションを考えていかなければならないと思いました。

ドリアン畑が無くなってしまうのは残念ですが、現実を見ればバングラデシュの人に必要なのは、経済成長とそれに伴う劣悪な生活環境の改善です。世界の投資家がバングラデシュに投資をし、それが経済を動かす力になって、現地の人たちの生活を変えていく。

投資とは、自分の資産を増やすためだけにやるのではなく、そこに大義があって、周囲の人を幸せにしなければ、長期的には成功しない。バングラデシュ投資には、その大義がある。短い時間でしたが、現地を自分の目で見て、そんな確信を持ちました。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。