経済界はなんだかんだ言いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出しています。恐怖指数はリーマン・ショックの際には90ポイント近くを付けたものが今や10ポイントを切りそうな状況にあります。いわゆる凪の状態と言ってもよいでしょう。ですが、この静けさが永遠に続くことはないことを歴史が語っています。
私は今日、明日に何か起きるとは思っていません。ですが、このところ世界で勃発する様々な問題やその兆候にやや嫌な予感を持たないわけにはいきません。
その走りとなったのがウクライナ問題でした。あの国内問題に世界の大国が寄ってたかって掻き雑ぜた挙句、ロシアが美味しい所だけをさらっていったというところに禍根を残した気がします。勿論プーチン大統領はそんなこと気にしていません。が、あの事件をきっかけに世界で「ボイスアウト」して自分たちの主権を強く外に訴える動きができた可能性があります。
その一つがイラク問題であります。ウクライナの問題とイラクの問題は何らつながりはありません。しかし、「動乱」を起こす勇気と「俺も!」というフォロワー的な動きがなかったとは言い切れないのではないでしょうか? ウクライナの問題はプーチン大統領が東部ウクライナには興味なしとした時点で私はこの争いは再び国内問題に回帰し、どこかで収まると指摘させていただきました。多分、着実にその方向に向かっていると思います。なぜなら、世界がウクライナを刺激せず、新大統領の手腕に期待を寄せているからであります。
一方、寝る子を起こしたのがイラクであります。こちらは非常に根が深い上に宗教、民族問題が根本であることに更なる複雑さが絡み合います。アメリカの腰がやけに引けているのはオバマ大統領の根本思想及び中間選挙を控えた時期的問題だけでなく、この問題に深入りすればどちらに転んでもとてつもないダメージを受けることが予想されるからであります。
つまり、コトがもっと荒れて処置の施しが出来なくなるかもしれないリスクがそこに存在するのです。イラクに於ける国内問題としてスンニ派とシーア派とクルド人の三つ巴の戦いを放置すれば石油価格の大幅な上昇と共にイスラム圏における国境を越えた結論の出ない争いが勃発するとも限りません。その際に西側諸国は下手に手出しすればテロという恐怖とも戦わざるを得ないのです。
そして三つ目の嫌な動きがアジアであります。中国と韓国が日本をあからさまに批判し、敵対視しているこの状況は政治を超えて我々国民にすら影響が出てこないとも限りません。今のところ中国は政治と経済は別物と捉え、日本には中国人観光客がわんさと押し寄せお金を落としてくれています。ですが、万が一、政治問題が表面化し、政府が規制でもすれば日本への影響は計り知れないものになることも確かなのです。
北朝鮮と日本が対話を通じてお互いの関係改善が着実に進んでいるのは孤立化した北朝鮮が頼れるのは日本しかいないというアジアのオセロゲームの結果であります。
韓国は日本人観光客が激減しているため様々な対策を打ち出そうとしていますが、国民感情はトップの姿勢に左右されるものです。首脳同士がほとんど交流できない中では国民が素直になれというのが無理な話です。日本人観光客が台湾に向かうのも無理はないのです。
世界において今後、古代ローマのような多頭政治が機能する時代かどうか、これが最大の挑戦であります。
G20の時代で世界の国々が平等なボイスを持つことができるとした民主主義の強化はある意味理想的な展開でありました。が、アラブの春は果たして平和をもたらしたのでしょうか? エジプトは民主主義となり、大きく成長しているでしょうか?
第二次大戦後、局地戦争を別にして世界平和が続き、経済成長が続いた理由は何でしょうか? もしも今後世界でなにか急変するようなことがあった場合、「あの時代の移り変わりの原因を述べよ」と言われれば私は「アメリカの弱体化」とはっきり断言しましょう。もっと言えばオバマ大統領にノーベル平和賞を差し上げたことで大統領の政策運営に箍をはめたことに繋がったと言い切ります。アメリカの役割とは民主主義の下、世界経済の繁栄を目指すという明白な目的を持っており、そこに多くの国家がフォローしたことでパクスアメリカーナを達成することができたのです。
このハードルについて私はカナダのモザイク文化がヒントになるかもしれないと思っています。世界を多頭のモザイクにする場合そこに必要なのは自分の領土の明白化、他国の尊重、そして、自己主張は自己の枠の中でのみ行うという自粛ではないかと思います。拡大主義による勢力地図の書き換えを抑えることがより長い世界平和につながると考えています。
この心配なる状況からいかに早く脱却できるかが50年、100年後の我々の社会を占うことになりそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年7月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。