国際通貨基金(IMF)は23日に公表したレポートで、2014年米成長率予想を6月時点の2%から1.7%へ下方修正しました。1~3月期(第1四半期)に国内総生産(GDP)が2.9%減と2009年1~3月期以来で最大のマイナス成長を示現したためです。2015年分は3%で維持しました。
レポートでは、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、「2015年半ば以降」もゼロ付近の低金利政策を維持できる可能性を指摘。、IMFは長期失業者が高どまりするほか賃金の伸びも限定的で、労働参加率も依然として1978年以来の低水準にあることから、完全雇用は「2017年末」にかけて達成されるとの見通しも示しました。インフレも、抑制的であり続けると見込んでいます。失業率が6月に6.1%と2008年9月以来の水準を回復しただけでなく6月18日に公表された経済・金利見通しの上限に達したものの、お構いなしです。
全米小売業協会(NRF)は、2014年の小売売上高見通しを従来の前年比4.1%増から3.6%増へ下方修正しました。NRFのマシュー・シェイ社長兼最高経営責任者(CEO)は、資料にて「いずれの小売業も上半期にみられた売上低迷を免れず、今年の動向に影響を与えた」と説明しています。やっぱり大寒波の爪痕が大きく残っているというワケです。NRFのジャック・クラインハンツ主席エコノミストは、6月時点に「消費に楽観的になれる理由として雇用回復と消費者センチメントの高まりが挙げられる」との見方を示していたんですけどね・・。
お買い物セラピーの贅沢、庶民には難しくなってきました。
(出所 : Stylebistro)
IMFが成長見通しを下方修正しましたが、覚えておきたいのが6月時点のFOMCメンバーの予想です。2014年末の成長率予想は、2.1~2.3%でした。モルガン・スタンレーのビンセント・ラインハート米主席エコノミストが指摘したように、1~3月期GDPを踏まえると9月時点でFedはあらためて成長見通しを引き下げる可能性を残します。特に、GDPの7割を占める消費が鈍化するリスクをはらむとあっては、なおさらでしょう。
足元で2007年以来と空前のM&Aブームなのも、見過ごせません。
マイクロソフトは17日、買収したノキア携帯部門に属する1万2500人を含む1万8000人もの大規模な人員削減計画を発表しました。全従業員のうち14%というのは、創業以来で最大です。マイクロソフトの発表は、M&Aを通じたリストラ時代突入の序曲にもなりえます。
「ニュー・ニュートラル」と呼ばれる低成長時代、利益を確保するため各社は合理化の手を緩めていない実情もあります 。
21日には格付け会社S&Pも、米国で最大100人の早期退職を募集する計画と伝えられました。生産性の向上という目的で、管理職を中心に格付け部門スタッフの6%相当を削減する見通しです。
ミッドタウンでは、50代と思われる男性が「Hire me(雇って下さい)」と書いたプラカードを胸元で抱えて立っている姿も見受けられています。最高値を更新する米株とは裏腹に、まるでリーマン・ショック後の2009年にタイムスリップしたかのようですよ。
(カバー写真 : Max Nathan)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年7月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。