相続増税で、不動産投資に失敗する人が増える予感 --- 内藤 忍

アゴラ

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日本経済新聞に相続税課税強化の記事が掲載されています。来年1月から新たに約600万世帯が相続税の負担を迫られる可能性が出てきたそうです。この相続税改正の最大のポイントは「基礎控除の縮小」です。

基礎控除とは相続税を非課税として扱う範囲のことです。現状の非課税枠は5000万円プラス法定相続人一人あたり1000万円です。これが改正によって3000万円プラス法定相続人一人あたり600万円となります。

例えば、夫が死亡し妻と2人の子が相続する場合(法定相続人3名)、これまでは8000万円超にならないと課税されなかったのが、来年からは保有資産が4800万円を超すと課税されることになります。


三井住友信託銀行が政府の全国消費実態調査から試算した、新たな相続税課税対象は約590万世帯。既存の課税世帯と合わせると1220万になり、全世帯数の23%になるとしています。今までは、お金持ちだけの問題だった相続税が、誰でもふりかかってくる可能性のある問題に変わりつつあるのです。

今月19日、20日に、私が代表理事をしている一般社団法人海外資産運用協会が開催した「海外資産運用アカデミー」でも、相続税対策の第一人者であるランドマーク税理士法人の清田税理士(写真)をお招きし、「相続税の改正による主な変更点と不動産税制」についてお話を伺いました。

相続税対策の最大の方法は、現金資産を不動産にシフトさせることです。土地の評価は公示価格の80%を目途とする路線価方式などによる評価で引き下げられます。また、建物も固定資産税評価額での評価となり、建築費の50%~70%程度になるとされています。

さらに、不動産を賃貸に出せば、借地権割合や借家権割合が考慮されるので、評価額を一段と引き下げることができるのです。投資用のマンションであれば、評価を30%近くにまで下げられるケースがあるといいます。

しかし、間違えてはいけないのは、相続税が下げられたとしても、資産価値が下がってしまったら、相続税を節税した意味がないということです。不動産投資によって相続税が500万円引き下げられても、購入した不動産が1000万円値下がりすれば、結局500万円損をしたことになるのです。最悪の場合、相続しても換金できない不良資産化するリスクもあります。

相続税が話題になるにつれ、相続税対策と称して、資産価値の無い不動産の購入を勧誘するケースが増えてくることが予想されます。相続税は圧縮できるかもしれませんが、相続した後で資産価値が劣化していることに気が付くというトラブルが頻発する可能性があります。

税金に関しては、しっかりとした知識をもった税理士に相談することが大切です。資産デザイン研究所では、このような情報も「資産デザイン研究所メール」で提供していきます。ご興味ある方はご登録ください(無料です)。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。