中韓の「ディスカウント・ジャパン運動」と東アジアの未来志向(上) --- 半場 憲二

アゴラ

ここ数年、数ヶ月、いやこの数日間のニュースを見ただけでも、韓国や中国によるディスカウント・ジャパン運動が目に留まらない日はない。私は今、中国内陸部にある武漢市に暮らしているので、この国を自分の目で観察できるし、知りたいことは直接、学生にたずねることができる。

韓国の事情についてはマスコミやインターネットを通じて知るほかは、上海師範大学留学中に知り合った友人を通じて確認することができる。一番いいのは会って話すことだ。 


私が知っている韓国の友人たちは礼儀を重んじる。時間に正確だし、仕事だって真面目である。約束を守り、よく気が利く国民性だ。今年はすでに2度訪韓しており、10月にも友人の結婚式に参加する予定でいる。毎度のことだが、お酒を飲み交わすときは「私は日本人なんだから気にしないでくれ」と強く言うのだが、彼らは顔を横にむけ、口元を隠しながらコップを傾ける。年上に対する礼儀だそうである。そんな彼らとは対照的に、韓国のイメージを低下させているのが、朴槿恵政権である。

韓国発のディスカウント・ジャパン運動によって日本のイメージを崩し、諸外国が連携して日本に対する非難を呼び起こし、相対的に韓国の地位を高める。というほど、国際社会は単純に構成されていない。それに「反日」を強めれば強めるほど、南シナ海から太平洋に至るまで絶対的覇権を握ろうとする中国を利し、コミンテルン(共産主義の国際団体)――のような存在になり下がり、韓国の未来を危うくするかもしれない状況に陥れているのである。

日本の新宿コリア・タウンを歩いていても、新宿区の住民基本台帳をみても、今では中国人が増えているし、米国の人口に占めるアジア系の割合は1965年は1%に満たなかったが、2011年には約6%にまで増えているという。反日運動の勢力図も、このままいけば、韓国系から中国系に取って代わるだろう。何もしなくても、どの道、中国=共産党指導国家の影響下に入っていく状況にあるのに、自ら接近していくというのは非常に愚かな行為といえよう。

もともと「ディスカウントジャパン運動」はキリスト系の組織がインターネット上で「歴史を歪曲する日本を修正するため」として始めたのが最初といわれている。私からすれば「自分の顔を鏡で見てから言ってくれ」といった感じだが、宗教に名を借りた政治団体はどこの国でも健在である。今では在米韓国人が各州議会や政治家に対し、執拗な運動を展開している。

1.象徴天皇への侮蔑
 
2012年8月10日、李明博大統領(当時)は竹島に上陸し、韓国領であると発言した。同年8月14日、「日王について、『痛惜の念などと言いに来るのなら、訪韓の必要はない』。『韓国に来たいのであれば、独立運動家を回って跪いて謝るべきだ』」と謝罪を要求した。

中国共産党でさえ、外交上、日本の皇室を利用しこそすれ、天皇陛下に対する侮辱はない。例えば、1989年1月7日、昭和天皇が崩御し、皇太子明仁親王が皇位を継承したとき、中国外務省スポークスマンは、「中日国交正常化後、裕仁天皇は訪日した中国指導者と何度も会見し、過去の不幸な歴史に反省の意を示され、中日両国の長期にわたる善隣友好関係に関心を寄せ、それを希望された」と中国の国益にそった形で、肯定的な見解を示した。

また同年4月、来日した李鹏首相(当時)の打診によって天皇訪中計画は遡上に上がっていたようであるが、同年6月4日に起こった天安門事件により、国際社会が中国という共産党独裁国家との関係を再考し、日本もまた対中外交の転換を迫られた時代である。

钱其琛国務委員・外相(当時)は、天皇訪中に期待した真の狙いについて、「中日関係を新たな水準に引き上げた。同時に(天安門事件による)西側の対中制裁を打破する上で積極的な役割を発揮し、その意義は両国関係の範囲を超えたものだった」と回顧している(城山秀巳氏『中国共産党「天皇工作」』、文春新書2009年参照)。

実際の多くの日本国民にとって国旗は日の丸、国歌は君が代であって、天皇は象徴なのであり、日本国憲法第1条に明記されている「日本国の象徴、国民統合の象徴たる天皇」をこうも侮蔑されたら、「あんたには言われたくないんだよね」となろう。

いつまでも果てることのない「反日運動」に対し、忍耐強く我慢してきた日本国民であったが、わが国が象徴と位置づけ、中国共産党でさえ日本の「元首」と位置づける天皇に対する侮蔑は内政干渉の比ではない、国体への挑戦なのである。多くの日本国民の感情を逆なでし、火に油を注ぐものであった。国家ぐるみのディスカウント・ジャパン運動の開始を告げたのである。

2.韓国要人の驕り

経済面ではどうだっただろうか。少し長くなるが、Business Journal 3月5日(水)3時10分配信記事をみてみたい。

IMF(国際通貨基金)には、「年次協議報告書」と呼ばれる加盟国の経済全般を毎年評価する制度があります。ここで韓国経済についてIMFは再三「韓国経済は下方リスクがある」「保証金のレベルが危険域にある」など、さまざまな警告を発しています。 その動向に大きな注目を集める世界最大級の投資機関・ゴールドマンサックスが韓国から撤退し、今年は4月末・5月末に大型の償還期限を迎える国債があり、さらには日本との通貨スワップ協定も終了という、極めて危機的な状況にあります。 昨今、もっぱら景気回復が完了したとの声が高いアメリカは、もし韓国経済が崩壊して金融危機が引き起こされ、市場が荒れるような危険はなんとしても避けたいところで、できれば「自分の懐を痛めずに」韓国を支援する資金を捻出しようと考えたのです。
その錬金術とは、日本に韓国の金銭的支援をさせることです。

しかし、韓国要人の「驕り」はおさまる気配がなかった。

例えば、日韓通貨スワップ協定の延長については、金仲秀韓国銀行総裁が、「日韓両国のためになるのであれば延長してもいい」と述べた。日本政府がどう応じたかは言うまでもなく、マスメディアを通じて伝わってくるものは、日本に対する挑発的な発言ばかりだった。このような発言が続けば永田町のみならず、消費税増税を予定通りに実施するため、世論の動向に敏感な霞ヶ関の官僚だって黙ってはいないだろう。

配信記事は続けて述べる。

日本の世論を考えると、政府は関係が悪化している韓国を積極的に助けるという選択をすることは難しい。しかし、正面から「NO」を突きつけることは国際的な非難を浴びかねません。そこで一計を案じたのが、今回の安倍首相の靖国参拝です。まず、過去のスワップなどの事例も見れば明らかなように、韓国人はプライドが高く、自分から援助の申し出などは絶対にしません。そこをうまく突き、『韓国がお願いしてくるのであれば、資金提供を拒まない』と世界に向けて配信した上で靖国参拝をし、韓国国民の反日感情を煽り、韓国政府が日本にお願いしにくい状況をつくり出したのです。

私は昨年12月26日の安倍首相の靖国神社参拝が中国の「毛沢東生誕120周年」にあて付けたものと思っていたが、それだけではなかったようである。実際、中国内では春節(旧正月)前の帰省準備や仕事の総仕上げといった多忙な時期、人心がそわそわした時期であったため、反日運動は抑制されたが、ディスカウント・ジャパン運動を主導している韓国に、日本の血税が使われずに済んだことは、日本国民にとっては非常にありがたいことである。

(中)へ続く

半場 憲二(はんば けんじ)
中国武漢市 武昌理工学院 教師