高校生の時にお世話になった「代ゼミ」が20校を一斉に閉鎖するというニュースがありました。
私が受験生だった1980年代前半には、東進ハイスクールも早稲田塾も無く、代ゼミ、駿台予備学校、河合塾が「三大予備校」と呼ばれていました。
講師の代ゼミ
生徒の駿台
そして、机の河合(机が1人ずつに分かれていて、スペースが広かった)
とそれぞれにウリがあって、その中でも講座名に講師の名前がついていたのは、代ゼミだけだった記憶があります。
予備校ビジネスは、その後環境が大きく変わり、時代の変化に対応できなかったのが、代ゼミの衰退につながったと新聞記事では解説されています。
環境変化とは、大学入試の現役志向、国立理科系志向、そして個別学習志向の3つです。
今や、日本の大学は「全入時代」となり、どうしてもこの大学というこだわりがなければ、浪人する必要はなくなっています。ちなみに、浪人生は20年前の4割に減ったそうです。一浪が当たり前だった時代とは様変わりになりました。
また、就職環境の厳しさから国立志向と理系志向が強まり、私立文系の人気が低下。私大文系に強い代ゼミには逆風になりました。
さらに、生徒の学習方法が、大教室で決まった時間に講義を聞く形式ではなく、ネットを使ってオンデマンドでいつでも学習できる形式に変わってきて、その対応にも遅れたことが影響しているようです。
私が受験の時は、大教室に早く行って、良い席を取って、黒板に書いてある先生の文字を一字ももらさないようにノートに板書して、真剣に聞いていたものです。しかし、今ではノートも事前に準備されたまとめがあって、授業もわからなければ再生を繰り返して何度でも好きなだけ学習できるようになっているはずです。
技術革新を上手に取り入れ、顧客(学生)のニーズに対応した予備校が生き残り、従来の方法からの対応が遅れると、生徒があっという間にクオリティの高いサービスにシフトしていってしまう。予備校の顧客は永遠にリピートする訳では無く、1年かせいぜい数年お世話になるだけのお客様です。ロイヤリティがある訳でもなく、斬新なサービスができればそちらにシフトしていくスピードは極めて早いのです。
だから、時代の変化に対応して、顧客のニーズをつかみ、企業経営を俊敏に変えていかなければ、代ゼミほどのブランド力と規模のある企業であっても、結局消滅していってしまう。逆に規模が大きかったが故に、あるいは大きな設備投資をしてしまっていたが故に、方向転換が遅れてしまい、対応が後手に回った可能性もあります。恐竜が栄華を極めていたのに、環境の変化に対応できず、滅亡してしまったのと同じ原理です。
予備校業界のこのような変動は、他人事ではありません。ビジネスの世界は自然界の生存競争と極めて似ています。自分の今やっている資産運用の仕事も例外ではありません。
常にお客様の満足度を考え、新しいサービスを積極的に取り入れつつ、クオリティを維持していく。私の現状の仕事は、代ゼミのような「恐竜」ではなく、かわいい小動物のような存在ですが、大手の会社に食べられないように、俊敏さだけは失わないようにしたいと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。