スマホ時間長いほど学力は下がるのか

本山 勝寛

「スマホを使用する時間が長いほど学力テストの結果が低い傾向にある」といった報道が各メディアで流れていた。共同通信の配信記事を抜粋すると以下の通り。

【全国学力テスト】スマホ使用で学力低下? 1時間以上、中3は47%

 文部科学省が公表した全国学力テストの児童生徒アンケートで、平日に携帯電話やスマートフォンで1時間以上、通話やメール、インターネットをするのは小6で15・1%、中3では47・6%に上ることが分かった。テスト結果と比べると、使用時間が長いほど成績が低い傾向が浮かんだ。
 文科省は、回答のうち「携帯やスマホを持っていない」を除いて使用時間と成績を詳細に比較。中3で4時間以上使う生徒は10・8%で、数学Aの平均正答率は55・7%だったが、使用時間30分未満の15・9%の生徒は、72・7%だった。
 小6でも4時間以上使う生徒の算数Aの平均正答率は66・6%で、30分未満の正答率79・8%とは差が開いた。


この結果は当たり前といえば当たり前なのだが、報道や調査結果の発表の仕方は気をつけなければいけない点がある。スマホの使用時間と学力テストの結果には相関関係がある。これは確かだ。だからといって、スマホを使う時間を少なくすれば学力が上がるのかといったら、必ずしもそうとは限らない。

スマホの時間が少なくなった分、勉強や読書などをするのではなく、バラエティ番組をみたり、ゲームをしたりしていては、学力は向上しないだろう。逆に、スマホを使用していたとしても、英単語や漢字のアプリ、電子書籍の読書、映像授業の閲覧、調査学習、ブログによる論考や書評などに時間を費やしていれば、学力が向上する方向に働くだろう。ただ、小中学生がスマホを使う場合、平均的にはSNSによる友人とのコミュニケーションやゲームに時間を費やす方が多いということにすぎない。

子どものスマホ時間と学力は相関関係があるものの、だからといってスマホ時間を減らせば即座に学力が上がるといった因果関係を表すものではない。この違いは以前にも、『「よく遊ぶ子は賢くなる」は本当か』という記事でも書いた通りだ。

では、学力をあげるには一体どうしたらよいのだろう?これは簡単だ。最も確実なのは勉強時間を増やすことである。拙著『16倍速勉強法』で私は勉強の成果を表す仮説として以下の方程式を提示した。

勉強成果=地頭×戦略×時間×効率


地頭や戦略、効率を上げることでもテストの結果は向上するが、もっとも手っ取り早いのは勉強時間を増やすことだ。スマホの時間が長ければ他に使える時間が短くなるので結果的に勉強時間が少なくなる。だから、学力テストの結果が低いという傾向が出ているのだ。さらにいえば、効率という観点からも、勉強中にLINEやメールをいちいち気にしていたら集中できず、効率は下がる。勉強時間中はスマホや携帯の電源を切るか、通知がこないようにして目の届かないところに置いておくことをお勧めする。

地頭という点でいえば、メールではあまり成果は期待できないが、ニュースや有識者のブログ論考を読んだり、電子書籍を読むことはスマホを使用したとしても大いに効果がある。昔と違って、自分の関心のある分野を簡単に検索したり登録できるわけだから、使い方によってはスマホも大いに役立つのである。英語なんかはつまらない教科書で勉強するより、自分の好きな英語動画を視聴しまくった方がよっぽど効果的だ。(その点については『YouTube英語勉強法』でまとめた。)

YouTube英語勉強法
本山 勝寛
サンマーク出版
2014-06-20


戦略という点でも、受験情報やテストの対策、勉強の仕方など、これまで塾に行かなければ手に入りにくかったような有用な情報がネット上に溢れている。スマホが勉強の阻害になるか、それともコストパフォーマンスの高い学習補助ツールになるかはその人の使い方次第だ。

父兄や教育者には、スマホを禁止することに神経をとがらす以上に、学ぶことの楽しさと魅力、テクノロジーによってそれがさらに加速されることの素晴らしさとその方法をぜひとも伝えていただきたい。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。