世界に「性奴隷」を売り込んだ戸塚悦朗弁護士

池田 信夫


朝日新聞の反論は「当社が誤報を続けた吉田清治の報道に実害はない」といいたいようだが、国際的には彼らの報道が性奴隷の根拠とされている。この言葉を発明したのは、戸塚悦朗弁護士である。上の世界日報とのインタビューで、彼は「私が性奴隷と命名した」と自慢している。


戸塚氏は国連のNGOに所属する立場を利用して、慰安婦問題について国連人権委員会が勧告を出すよう執拗に働きかけ、20回近い会合に出席して吉田清治の話を英訳して配布し、慰安婦をSex Slaveと英訳して世界に紹介した。ここで彼が全面的に依拠しているのが、朝日新聞の報道した吉田証言である。

1996年に出されたクマラスワミ報告書は、性奴隷の根拠を吉田清治の証言に求め、次のように書いている。

強制連行を行った一人である吉田清治は戦時中の体験をもとに書いた中で、国家総動員法の一部である国民勤労報告会の下で、他の朝鮮人とともに1000人もの女性を「慰安婦」として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している。(10)

ここで文献番号10となっているのが、吉田の『私の戦争犯罪』で、この報告書の中で何度も引用されている。それ以外に一次資料はなく、戸塚氏などの集めてきた元慰安婦の話だけである。それをもとに、この報告書は「日本政府が性奴隷についての法的責任を受け入れ、個人補償を行うこと」を勧告している。

この報告書についての日本政府の対応も不可解だ。当初、外務省はクマラスワミ委員会に対して40ページの反論書を提出したが、なぜか撤回し、半ページぐらいの形式的な反論しかしていない。この経緯は不明だが、当時の村山政権から取り下げろという圧力があったと推定されている。当時の外相は、河野洋平氏である。

いずれにせよ、日本人が「性奴隷」という言葉を発明して世界に売り込み、外務省がそれに反論もしないで放置してきたことが、この問題が国際的に既成事実になった大きな原因だ。クマラスワミ報告の根拠となった吉田証言を朝日新聞が虚偽と認めた以上、クマラスワミ報告も、そのあと出た同様のマクドゥーガル報告書も、国連は撤回すべきだ。

そしてこのような国際的な情報汚染をもたらした戸塚氏と、それを知りながら反論しなかった(あるいは反論を妨害した)河野元外相を国会に喚問する必要がある。