デメジエール独内相は9月12日、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国(IS)のドイツ国内での活動はわが国の公共の安全にとって脅威となる」として、IS関連の活動を禁止すると発表した。
同内相によれば、ドイツから約400人がシリアやイラク国内のISの戦闘に参加し、 100人以上が帰国している。彼らの多くはインターネットやサイトを通じて過激派から勧誘を受け、シリア、イラク入りしている。ドイツ当局が警戒しているのは、「聖戦」から帰国した者がドイツ国内で過激なテロ活動を計画することだ。
欧州からシリア、イラクの内戦に参戦している人数は約3000人と推定されている。最大の「聖戦」参加者数はフランス国籍を有する欧州人で、その数は約900人だ。それに次いで約500人が英国人、そしてドイツ人の400人と続く(欧州連合内のテロ対策機関)。
ところで、独連邦憲法保護局はこのほど「ジハード」に参戦した独国民のプロフィールを分析し、その結果を公表している。対象は2012年中旬からシリア、イラクの「聖戦」に参加した378人だ。それによると、ドイツの「ジハード」参戦者の言動の過激化はサラフィスト・グループ時代に始まっている。彼らのほぼ90%は男性であり、60%はドイツ生まれだ。そして30%以上が前科を有していた。また、参戦した240人はイスラム教の家庭に生まれ、54人はドイツ国内で他宗教からイスラム教へ改宗している(「ホームグロウン・テロリストの脅威」2013年9月12日参考)。
ちなみに、サラフィストは初期イスラム教への回帰思想であり、聖典コーランを文字通りそのまま信じ、その解釈を拒否し、欧米社会との統合を拒否する。国際テロ組織アルカイダに近く、イスラム教内では超保守派のワッハープ派の思想潮流をいう。
当方は「なぜ、彼らは戦地に向かうのか」(2014年8月22日参考)というコラムの中で、「彼らは社会に統合できないで苦しんできた。言語問題だけではない。仕事も見つからず、劣等感に悩まされるイスラム系青年も少なくない。そこで聖戦のために命を懸けるべきだというイデオロギーに接した場合、彼らはそれに急速に傾斜していく」と分析する社会学者の意見を紹介したが、それだけではないだろう。
キャメロン英首相は14日、ISが英国人の人道支援団体メンバーを虐殺したことに対し、「ISはイスラム教とは全く関係ない。彼らは化け物だ」と批判したばかりだ。それに対し、独政治学者、ハマド・アブデル・サマド氏は「イスラム教の教えの中に暴力性、排他性がある。それらは21世紀の社会では異質のものだ。ISの残虐性はそれを端的に示している」と説明、イスラム教の教義的問題点を指摘している、といった具合だ(「唯一神教の『潜在的な暴力性』とは」2012年6月5日参考)。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年9月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。