韓国政府は何をしてほしいの?

池田 信夫

同じことを何度も書いたけど、朝日新聞もテレビ朝日もニューヨーク・タイムズも神奈川新聞も同じ話をくり返しているので、よい子にもわかるように説明しましょう。

問題の本質は、女性たちが戦地で日本軍将兵に性的行為を強要されたことにある。慰安をしたのではなく性暴力を受けた。兵士の性病まん延防止と性欲処理の道具にされた。その制度づくりから管理運営に軍が関与していた。それは日本の植民地支配、侵略戦争という大きな枠組みの中で行われたものであった。

これは「慰安婦問題、核心は変わらず 河野談話、吉田証言に依拠せず」という8月28日の朝日新聞の記事のパクリです。報道ステーションの古舘さんも一生懸命、吉田清治の話が嘘でも「本質」は変わらないといってました。彼らの言い訳はみんな

  • 吉田清治の話は嘘だった

  • したがって「強制連行」の証拠はない
  • しかし「本質的な問題」は、軍によって女性の人権がおかされたことだ

という筋道になっています。女性の人権などという話は20年前にはなく、強制連行が嘘だったとわかっても、朝日新聞が記事を取り消すのがかっこ悪いので出てきたのです。

昔は「強制連行を認めろ」と騒いでいた朝日(とその亜流)が、嘘がばれたら「最初から嘘だっていってたじゃん」というのはおもしろいですね。それなら、あれほど大論争していた強制連行は何だったんでしょうか。

まぁこれを認めるとしましょう。わからないのは、韓国政府は何をしてほしいのかということです。考えられるのは

  • 女性の人権侵害について日本政府が謝罪せよ

  • 日本政府が賠償せよ

のどっちか(あるいは両方)でしょうが、実はどっちも終わっているのです。「軍の関与」や人権侵害については1992年に加藤官房長官があやまり、広い意味の強制については、1993年の河野談話であやまっています。そしてアジア女性基金という形で、賠償もしました。韓国政府も、このときはOKしたのです。

ところがその後になって、韓国政府が「やっぱり正式の国家賠償をしろ」といってきたので、話がややこしくなりました。これはできません。なぜなら1965年の日韓基本条約で「1945年以前に起こった問題の個人への賠償は韓国政府がやる」と決まっているからです。わかりやすくいうと、

 日本政府→韓国政府→被害者

という形でお金が流れることになっていて、日本から韓国へはすでに5億ドルのお金が渡ったので、慰安婦のみなさんへの賠償は韓国政府がするのです。これは韓国も合意した上で、1965年に決まったことです。それをひっくり返していたら、条約は意味がありません。

朝日新聞が引くに引けないのはわかりますが、こうやって何も知らない神奈川新聞が言い訳までまねするのは困ったものです。おまけにNYタイムズの記者がこれを「必読!」といってすすめるんだから、マスコミの質の低下は世界的に深刻ですね。