シリアやイラクでテロ活動を繰り返すイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」(IS)は国際社会の包囲網にもかかわらず、依然その勢力を拡大している。ISの総兵力は1万5000人から3万人と推測されているが、2000人から3000人の欧米人がISの“ジハード”に参戦しているといわれる。彼らは出身国内でIS参戦帰国者や過激なイスラム教徒からリクルートされている。西側情報機関筋によると、「20代にもならない女性たちがシリアやイラクのジハードに参戦するケースが最近、増えている」という。
そこで欧米諸国は、ジハード参戦後、帰国した過激派の監視を強化する一方、関連法の強化に乗り出してきた。ドイツではデメジエール内相が9月12日、「ISのドイツ国内での活動はわが国の公共の安全にとって脅威となる」として、IS関連の活動を禁止すると発表したばかりだ。
欧米からISの「聖戦」に参加する数はフランスが約900人で最も多く、それに次いで約500人が英国人、そしてドイツ人の400人と続く。当方が住むオーストリアからも約140人が参戦していることが判明している。ウィーンの15歳、16歳の少女が今年に入り、突然、トルコ経由でシリア入りしたことが判明し、大きな衝撃を投じたばかりだ。普通の女の子が突然、「アラーのために命を捧げる」と決意したということに、国民は驚いたわけだ。
そして8月18日、イスラムの聖戦に参戦するためシリアに向かおうとした10人(17歳から32歳)がケルンテン州とブルゲンランド州国境でオーストリア連邦憲法保護・テロ対策局(BVT)と内務省特別部隊(コブラ)によって拘束された。チェチェン人の難民8人と1人はトルコ系のオーストリア人だ。残り1人は未成年(17歳)のためすぐに釈放された。
オーストリア内務省と法務省は15日、ISのリクルート防止法(通称・新ジハード法)の草案を公表している。具体的には、2015年1月施行を目指して7項目の関連法修正案を検討している。1. ISやアルカイダなど18テロ組織のシンボル(旗、ロゴ)禁止、2. 2重国籍を所有するIS参戦者はオーストリア国籍を剥奪、3. 両親の許可なくして未成年者の欧州連合(EU)域外旅行を禁止、4. BVTのテロ専門家、新たに20人育成、5. 扇動罪の修正、6. 悪質なケースではデータ保存規制を見直し、7. 教師、学生、父兄会の対応強化などだ。
ちなみに、7点の修正案の中で1. のISのシンボルの禁止について、イスラム教関係者から「通常のイスラム教グループでもよく似たシンボルを使用することがある」と指摘、シンボルの禁止に抵抗の声が聞かれる。
ヴォルフガング・ブランドシュテッター司法相は記者会見で、「ISを支援し、暴力を拡大する者は今後、厳しく処される。それに関連して扇動罪も強化される予定だ」と説明している(エステライヒ紙9月16日付)。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。