ギャンブル依存症の話 --- 宇佐美 典也

アゴラ

ふとした縁からギャンブル依存症の治療支援活動をしている田中紀子サンと仲良くなりまして、ちょっとした動画をとってみました。

田中サンは祖父、父親ともギャンブルにどっぷり浸かった「筋金いりのギャンブル一家育ち」でして、その影響で本人もギャンブルにはまり、本人はおろか旦那さんもギャンブル依存症だったこともあり、「結婚式の予定を夫婦でカジノに入り浸りですっぽかす」などなかなか壮絶な人生を送っていらっしゃいます。ここではその端緒しか議論していないのですが、10分程度の動画なのでお茶の時間にでも見てみてくださいませ。


私も目から鱗だったのですが、ギャンブル依存症に関してはどうしても「自己責任ではないか 」との議論がつきまとうのですが、ギャンブル依存症に起因する社会的弊害が無視できない程大きいようで、以下のような重大犯罪の背景にはギャンブル依存症が見え隠れします。

○ベネッセ大量情報流出事件:パチンコで借金

○大王製紙特別背任事件:カジノで大損

○伊藤忠商事巨額横領事件:FXで大損

○コンゴ大使館元外務省職員業務上横領及び放火事件:カジノで大損

○りそな銀行金融商品取引法違反事件:FXで大損

○茨城県国保連合10億円横領事件:競艇で大損

ギャンブル依存症の治療は自助グループと治療施設に入居する方法があるのですが、日本ではただですら治療施設や自助グループが少ない上に偏見が強く、また業界の取組みも乏しく情報発信がされておらず余り周知されていないという問題があります。それに日本の治療施設は有料なのですが、ギャンブル依存症患者の大半は借金を抱えているので、そもそも入居が困難という問題があります。

なおギャンブル依存症について触れると「これだからパチンコ業界は・・・」というテンプレートな批判がくるのですが、パチンコ業界は小規模ではありますが各地域ごとに対策を進めていますし(ex: http://www.kanaloco.jp/article/69828/cms_id/75892)、警察の指導で射幸性がコントロールされているので、過剰に批判するのはいかがなものかと思っております。(ただ学生レベルの予防教育はもっと推進すべきだと思いますが。)

同じく「カジノを導入するとギャンブル依存症が増える」というのも論理もあまり賛同し難く、「既に存在するギャンブル依存症対策をしないまま(パチンコより射幸性が高い)カジノを日本に導入すると、ギャンブル依存症患者がカジノに行って破滅する」という因果関係にあるような気がします。

むしろ現状一番問題になっているのは大金が賭けられるにも関わらず何の対策もせずに野放しで展開されている、競馬、競艇、FXの方な気がします。競馬や競艇は公営ギャンブルなのにも関わらず、ほとんどギャンブル依存症対策がとられていないようですし、FXが実質的にギャンブル化しているのは論をまたないでしょう。

カジノ法案の議論を機に、カジノに限らずこうした日本の環境が改善することを望みます。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2014年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。