資産運用の「正しい方法」については、諸説あります。私は「金融資産は低コストインデックス運用、実物資産はある程度のコストをかけてアクティブ運用」という「ハイブリッド投資法」を指向し、自らの資産でも実践しています。
今週の資産デザイン研究所メールでもご紹介しましたが、日経新聞の記事によれば、ノルウェー政府年金基金が、投資信託の過去の運用成果を分析したところ、リターンのほとんど(99.7%)が、どのベンチマークを選択したかで決まっているという結論になりました。
この元ネタは、野村証券の金融工学研究センターが作成した日本株クオンツストラテジーというレポートです。本レポートを早速取り寄せて読んでみました。日本の投資信託を使って、2002年6月から2014年8月のデータで分析した結果が書いてありましたが、
全期間平均で
98%がマーケット要因(2%がアクティブリターン)
残り2%のうち、約74%がファクター効果
となりました。ノルウェーの分析とほぼ同様の結果です。
簡単に言えば、投資の成果は、日本株のファンドを買うか、外国株のファンドを買うかといった投資対象の選択が圧倒的に重要で、その中でどのファンドを買うか(アクティブリターン)は全体の1~2%で、投資成果にほとんど関係ないということです。
しかも、残りのアクティブリターンを分析すると、約70%が、ファクター効果(バリュー効果、サイズ効果、ボラティリティ効果、モメンタム効果)で説明可能だということです。これは、スマートベータという運用方法でアクティブファンドマネージャーを使わなくても実現できる運用成果です。
国内のアクティブ運用の投資信託の信託報酬(年間の運用コスト)は1.5%を超えると思われます。一方のインデックスファンドは0.4~0.6%前後。年間1%の差があるとすれば、10年で10%にもなります。果たして、ファンドマネージャーが銘柄選択を行うアクティブファンドに、高額の手数料を払う必要はあるのでしょうか?
今後、日本の個人投資家の資産運用も、「どの銘柄を買うか」「いつ買うか」といった銘柄選択や投資タイミングより、「どの資産に投資するか」というアセットアロケーションにウエイトが置かれるようになると予想します。そして、金融商品に関してはコスト意識が高まり、高コストに見合う成果が出せないアクティブファンドは消えていくことになるのではないでしょうか。
投資の成果を上げるには、むしろ外貨の比率を資産全体の何%にするのか、あるいは金融資産と実物資産にお金をどう振り分けるか、といったことにもっと時間とコストを費やすべきなのです。
金融資産を低コストで分散させ、長期でインデックス運用する。そのような「コア」の資産運用に、実物資産を使ったアクティブ運用を「サテライト」として組み合わせる。そんな「お金のデザイン」の方法は、今まで出版してきた書籍で、私自身が実践している方法としてご紹介しています(写真は、特に読んでいただきたい資産運用関係の3冊です)。
日本の個人投資家にも、いよいよ「資産運用革命」が起こるのではないか?そんな期待と予感が高まってきました。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。