全米リアルター協会(NAR)が発表した米8月中古住宅販売件数は505万件となり、市場予想の520万件より強い結果となった。前月の514万件(515万件から下方修正)を1.8%下回り、予想外に増加トレンドを4ヵ月で止めている。
内訳をみると、一戸建てが前月比1.8%減の446万件と5ヵ月ぶりに減少したほか、複合住宅も1.7%減の59万件と前月の±0%からマイナスに転じた。
4大地域別でみると、2地域で増加。前月の4地域を下回った。今回は、北東部が4.7%増の67万件と前月の横ばいから増加に反転。中西部も2.5%増(4ヵ月連続で増加)の124万件を示した。一方で、最も住宅市場の規模が大きい南部は4.2%減(前月の増加から反転)の203万件と2011年2月以来で最大のマイナスに。西部も4.0%減(5ヵ月ぶりに減少)の111万件だった。
在庫件数は、前月比1.8%減の231万件と足元で最大から下押しした。在庫とともに販売件数が減少したため、在庫相当は4ヵ月連続で5.5ヵ月。金融危機後で最も短期化した1月の4.3ヵ月から、遠のいた水準を保つ。中央価格は前年比で4.8%上昇の21.98万ドル。5ヵ月連続で20万ドルに乗せたが、2007年8月以来の高水準だった過去2ヵ月間の22万ドル超えから鈍化した。前月比では0.7%下落し2ヵ月連続で前月比マイナスだった。売り出し平均期間は53日と前月の48日から延び、5ヵ月ぶりの長さに。足元最短だった2013年6月の37日を上回った水準を保つ。
買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件 6%=前月は6%、前年同期比8%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 2%<前月まで3ヵ月連続で3%、前年同月は4%
・差し押さえとショートセールを合わせた不良債権物件 8%<前月は9%、前年同月比は12%
・新規購入者 29%=前月は29%、前年同月は28%
・現金での購入者 23%<前月は29%、前年同月は32%
・住居用ではなく投資向け 12%<前月まで3ヵ月連続で16%、前年同月は17%
NARのローレンス・ヤン米エコノミストは、主に投資家動向が弱含んだ結果を受け「投資家は金利上昇局面では実入りが芳しくないため潜在的な金利上昇を懸念している」と説明した。
JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、7月まで4ヵ月連続で増加した点を評価した上で「8月こそ予想外に減少したものの7-9月期の中古住宅販売件数は4-6月期を上回る見通しで、仲介業者の手数料が大幅増加する公算が大きい」と楽観的な見方を示した。米7-9月期国内総生産(GDP)の住宅投資も、「11%増」との予想を維持。同期GDP見通しも「3.0%増」を保った。
以上、住宅市場は投資家動向の需要低下を反映して減少したものの、エコノミストは住宅市場が減速する兆しとは捉えていませんでした。ただし9月16-17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、9月に入って金利が上昇したのも事実。投資家の販売動向が足を引っ張り新規購入も伸び悩めば、あらためて住宅市場が伸び悩むリスクは否定できません。秋の住宅購入シーズンで、あらためて回復ペースが試されることになりそうです。
(カバー写真:AP)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。