仮想通貨だけではなく「すべての資産はバブルに通じる」 --- 内藤 忍

アゴラ

昨日の資産デザイン研究所のセミナーは、慶応大学の小幡績教授を招き、仮想通貨についてお話を伺いました。7月に続き2回目の開催で、「アドバンス編」ということで、アカデミックな視点からセミナーを企画しました。

ビットコインの価格が数万倍に値上がりしたことで、投機対象として注目されることになった仮想通貨ですが、元々の目的は通貨として、低コストで決済手段を提供することにあったと言えます。資産を投入して値上がりを狙うような「投資先」ではなかったのに、いつしかマネーゲーム化して大儲けした人がいた一方、高値で購入して損失を被っている人もいます。


短期間で数万倍に価格が上昇したビットコインの値動きは、バブルであったことは明らかだと小幡氏は言います。だからといって、仮想通貨は消えていくものだと結論付けるのは早いと思います。なぜなら「すべての資産はバブルである」と見ることもできるからです。株式然り、不動産然り、金も然り、そしてドルや円といった通貨も然りです。仮想通貨だけが特別なものとは言えないのです。

小幡氏のセミナーは、マルクスや岩井克人氏の「貨幣論」まで遡り、貨幣とは何か、通貨とは何かという根源的な疑問から仮想通貨を考えるという壮大な内容でした。極めて高度な内容で、短い時間で理解するのは難しかったと思います。しかし、仮想通貨の問題点と可能性について、論点を整理することができました。

仮想通貨というのは、ビットコインだけではなく、ライトコイン、リップルというように様々なものが流通をしており、どれが普及するのかはわかりません。また、中央銀行や政府の見方も国によって違いがあり、日本では現状、金と同じように通貨ではなく、商品という位置付けです(購入時に消費税がかかります)。

黎明期にあるからこそ、わからないことがたくさんあり、価格も乱高下する。現時点では通貨の3つの機能である、交換媒介、価値尺度、価値の保蔵のいずれも満たしているとは言えません。

欠点ばかりが目につくから、存在を無視するのか。それとも、欠点を認めた上で、これからの推移を見守り、新しい可能性に注目するのか。仮想通貨との付き合い方は、人それぞれだと思いますが、私はお金の専門家として、これからも仮想通貨をウォッチしながら、情報提供を続けていきたいと思っています。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。