香港の混乱は近いうちに収束する、その理由 --- 岡本 裕明

アゴラ

私のブログでこの問題を取り上げたのが9月14日。その頃は日本ではまだ、香港の民主化運動って何、というレベルだったと思います。事の発端は8月31日の中国政府による2017年香港のトップである行政長官の選挙方法について発表があった際、いわゆる「一国二制度」が事実上閉ざされたことでした。そして一部の賢い経営者の動きとは別に市民が前線に立ってボイスアウトする姿勢は日増しに高まっていきます。


中国側はこの高まる香港市民の動きに対して情報をコントロールするとともに世界各国で香港側にエールを送らないよう必死の抑制策を行っています。多分、それは非常に難しい技となるはずです。なぜならば香港は一国二制度の「緩い方に所属」しているからであり、中国国内での情報コントロールは出来ても香港は開かれた地域であってあらゆる動きは筒抜けで世界に瞬時に伝わります。習近平国家主席としては頭を悩ませる事態となってきたと思われます。

習体制にとって香港を抑えられなければ台湾、そして新疆ウィグル地区などからも当然、火の手が上がりやすい状況となり、いかにうまく抑えるか、それが力の制圧か、対話による説得か、更には代替策を提示するなどの習体制にとって妥協を強いられる結果となるのか、中国、そして習体制を予見するにあたり極めて重要な局面となってきたと考えています。

中国の王毅外務大臣がワシントンでオバマ大統領、ライス大統領補佐官との会談でアメリカの得意とするおせっかいと中国の「自国は自国、自分で対処する」という姿勢を崩していないところに両者の立場の相違が見て取れますが、11月のAPECまでに中国側が何らかの沈静案を持って香港市民の感情を抑えないことにはAPEC自体の目線がそこに集まりやすくなり、それこそ、北京での開催なのに自国のことで突っ込まれるという格好悪い事態に発展しかねません。

一方、香港の現在の長官で辞任要求のやり玉に挙がっている梁振英氏は自らの進退について「辞めることはできない」と発言している意味をどうとるか、であります。香港の長官が辞められないという事はなく、事実、初代行政長官であった董建華氏は2005年に健康上の理由で辞任しています。ということは梁振英現行政長官が辞められない発言しているのは中国側からの強いプレッシャーで盾になれと指示されているものだと思われます。

香港市民の要求の一つである梁振英行政長官を辞任に追いやって「代行」を立てたとしてもそれが市民のボイスを反映するより民主的な人選でなければ火に油を注ぐ結果となり、そのあたりのバランス調整を行っているのかもしれません。

私は最終的には一定の折衷案が出てくると思いますが、中国がその根本姿勢を覆すことはないとみています。また、武力行使は今の時代に逆行するのみか、世界から袋叩きにされることは確実であり、習近平氏のイメージ戦略を根本から揺るがすような蛮行はないと考えています。

この問題はどこかで必ず収まるはずですし、その時期はあとひと月以内だろうと思っています。中国はこれを放置しないし、必死で知恵を絞るでしょう。さもなければ富裕層の海外逃避や香港からの外資流出が起き、それが連鎖反応を起こし収拾がつかなくなるからであります。ただ、中国人は「しつこい性格で根に持ちます」から小手先の解決策では何れ同じような問題を繰り返すことになるでしょう。それは中国にとっての経済的損失にもなることは明白であります。

今日はこのぐらいしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。