韓国人は人の心が分かっていない --- 長谷川 良

アゴラ

いうまでもなく、間違いは正さなければならない。過ちを犯した者は法の前でその裁きを受けなけれならない……。当然のことだが、韓国社会では怒りが優先し、肝心の人間の心が余り理解されないのではないか、と感じる。

「産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が書いた朴槿恵韓国大統領に関するコラムをめぐり、ソウル中央地検が同前支局長を『情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律』(情報通信網法)における名誉毀損で在宅起訴した」(産経新聞電子版)というニュースを読んだ時、やはりそのように感じた。


加藤元支局長が「朴大統領の噂」というコラムを書き、「朴大統領は旅客船セウォル号沈没事故当日、大統領府を留守にして男性と会っていた」という話を報じた。情報源は朝鮮日報の記事だ。

情報の真偽が争点ならば、朝鮮日報記者を先ず追求すべきだが、ソウル中央地検は情報通信網法の名誉毀損に当たるとして産経新聞の加藤前支局長を起訴した。地検の起訴に対して、韓国メディアの多くはさすがに黙っておらず、「言論の自由」を侵す危険があるとして、地検の起訴を批判する論調を掲載している。

当方はこのコラム欄で「言論の自由」云々を主張するつもりはない。当方の関心は韓国社会では怒りが支配し、冷静に相手の心を理解する努力が少ないのではないか、という点にある。

ソウル中央地検が「朴大統領の男性との逢引」報道に大げさに対応した結果、朴大統領の逢引報道はその真偽は別として全世界に知れ渡ってしまった。逢引が事実ではないとしても、多くの読者は「あり得るかもしれない」といった印象を持ったのではないか。

当方も産経新聞のソウル前支局長が起訴されたというニュースを聞いて朴大統領の逢引報道の内容を初めて知った一人だ。朴大統領の怒りを受けたソウル中央地検がやむを得ず捜査に乗り出したという事情があるらしいが、報道内容が世界に流れたことで最も被害を被ったのは朴大統領自身だろう。

旧日本軍の慰安婦問題でも人間の心理を理解していないのではないかと思ったことが少なくない。米国などに慰安婦像を設置している韓国人たちは本当に慰安婦やその家族の心を理解しているのだろうか。自分の娘、妻が慰安婦だったとすれば、どの慰安婦や家族がその事実を全世界に報じたいと思うだろうか。異国の地にまで像を建て、世界に流したいと思うのは、慰安婦問題を政治目的に利用したい人間たちだけだ。当の女性たちはできたらそっとしておいてほしいと考えているはずだ。

事実を明らかにすることは正しい。女性を蹂躙した者がいたら、それを追及するのは当然だが、同時に被害者の立場も最大限に配慮すべきだろう。繰り返すが、「あの女性は旧日本軍の慰安婦でした」と公表されて本当に喜ぶ女性やその家族はいるだろうか。女性だけではない。韓国にとっても名誉ではない。韓国の将来の世代が「わが国は当時、妻や娘を慰安婦にされても何もできなかったのか」と、慰安婦像を見る度に不甲斐なかった時代の歴史を恥じるだろう。

アジア女性基金を設置し、慰安婦への救済に乗り出した日本側の対応は賢明だ。被害者の女性にとってどれだけ助かるか、韓国は考えるべきだろう。怒り、叫ぶことだけが、問題の解決に繋がるのではない。必要ならば、波を立てない静かな解決方法を見つけ出すべきだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。