倦むことなく和平の努力を続けよ --- 長谷川 良

アゴラ

エジプトの首都カイロで10月12日、パレスチナ自治ガザ区を実質的に統治するイスラム教根本主義勢力ハマスとイスラエル軍の間の戦闘で破壊された建物などを復興する支援国会合が開催され、総額43億ドルの支援が参加国から表明された。ノルウェーのブレンデ外相が記者会見で明らかにした。

同会合はエジプトとノルウエー両国のイニシャティブで開かれたもので、日本を含む約30カ国の外相、地域・国際組織代表らが参加した。アラブ諸国参加の障害とならないように、カイロの会合にはイスラエルは招かれなかった。


カイロ会合では、欧州連合(EU)は4億5000万ユーロ、米国は1億6800万ユーロの支援をそれぞれ約束している。ドイツはパレスチナとの2か国間支援として5000万ユーロの追加支援を表明した。

イスラエル軍とハマス間の戦闘(7月と8月)でガザ区の病院、橋梁、学校などが破壊された。独週刊誌シュピーゲル電子版によると、2カ月間余りの戦闘でイスラエル軍は約5000個所に空爆や攻撃を加えた一方、ハマスは約4500のロケット弾をイスラエル側に打ち込んだ。そして2100人以上のパレスチナ人、70人以上のイスラエル人が犠牲となった。国連側の発表ではガザ区では1万8000戸の建物が破壊されたという。以上、外電を中心にまとめた情報だ。

7、8月のイスラエルとパレスチナの衝突は、イスラエルの3人の青年が拉致され、死体で発見されたことが発端となった。ハマス側は関与を否定したが、イスラエル側は「ハマスの仕業」として報復を宣言。その直後、今度は1人のパレスチナ人の青年の死体が見つかった。イスラエル側は「パレスチナ人青年殺害には関係してない」と弁明したが、パレスチナ側は「イスラエル側の報復」と確信し、イスラエル領土に向かってミサイルを発射する一方、地下トンネルを通じてイスラエル内に侵攻し、奇襲作戦を展開させていった。

パレスチナ自治政府側によると、ガザ地区の復興費は約32億ユーロと見積もっている。その額はパレスチナ自治区のGDPの約3分の1に相当する。「建設しては破壊し、そして復興のため国際社会が資金を払う」といったパターンはこれまでも何度か繰り返されてきた。シュタインマイヤー独外相は「われわれは破壊するために金を払っているのではない」と指摘、パレスチナとイスラエル両者間に和平交渉に取り組むように強く要請。潘基文国連事務総長も「建設し、破壊し、そして再建のために復興支援会合を開催する。これらの一連のプロセスは決して儀式として行われてはならないことだ」と警告を発しているほどだ。

ガザ復興支援会合では、ホスト国エジプト側が和平案を提示している。その内容は、イスラエルは1967年の6日間戦争で占領した領土を返還すると共に、パレスチナ難民に対して公平な解決案を提示するならば、アラブ諸国はイスラエルの国家を容認するという2002年の和平案だ。ちなみに、イスラエル側は当時、既に同案を拒否している。

当方は「中東・やりきれない繰り返し」(2008年12月30日参考)というコラムの中で「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の聖地エルサレムから遠くないパレスチナのガザ地区で多数の血が流されている。しかし、これが初めてではない。やりきれない繰り返しに和平への気力が萎えてくることもあるが、国際社会は目を閉じるわけにはいかない」と書いた。国際社会はイスラエルとパレスチナ人の和解実現のため知恵を絞って支援すべきだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。