憲法をノーベル賞に申請するって、どういうことなんでしょうか。第9条は、次のようになっています。
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
- 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
これをノーベル賞委員会に申請した鷹巣直美さんは、朝日新聞によれば「普通の主婦」ということになっていますが、ネット上では「プロ市民」と呼ばれています。彼女の所属する「難民・移住労働者問題キリスト教連絡会」の入居していたビルには、あの国際女性戦犯法廷をやったバウネットなどの極左団体がたくさん入っています。この署名運動の文面は次のようになっています。
日本国憲法は前文からはじまり 特に第9条により 徹底した戦争の放棄を定めた国際平和主義の憲法です。特に 第9条は、戦後、日本国が戦争をできないように日本国政府に歯止めをかける大切な働きをしています。そして、この日本国憲法第9条の存在は、日本のみならず、世界平和実現の希望です。しかし、今、この日本国憲法が改憲の危機にさらされています。
鷹巣さんは知らないようですが、「戦争の放棄」を定めたのは日本国憲法が初めてではありません。1928年に制定され、日本も批准した不戦条約の第1条は、次のようになっています。
締約国は、国際紛争解決のため戦争に訴えることを非とし、かつその相互関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することをその人民の名において厳粛に宣言す。
憲法第9条の「国権の発動たる戦争は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」というのは、この不戦条約に準拠するもので、多くの国にこういう法律があります。これを起草したフランスのブリアン元首相は、ノーベル平和賞を受賞しました。
自民党の憲法改正案にも、こう書いてあります。
現行憲法9条1項については、1929 年に発効したパリ不戦条約1条を翻案して規定されたものであり、党内議論の中で「もっと分かりやすい表現にすべきである。」という意見もありましたが、日本国憲法の三大原則の一つである平和主義を定めた規定であることから、基本的には変更しないこととしています。
つまり鷹巣さんが「改憲の危機にさらされている」という憲法第9条第1項は、自民党も変える気がないのです。自民党が改正しようとしているのは、第2項の「戦力の不保持」を削除して「自衛権」を明記し、「国防軍」を創設することです。
これは当たり前のことで、日本は自衛隊という実質的な軍隊をもっているので、それを正式の軍として憲法で位置づけ、指揮系統をはっきりさせて文民統制や緊急事態などを規定しないと、戦争が起こったとき大混乱になります。
ところが鷹巣さんのような一国平和主義者は、軍隊をまったくもたないで、攻撃されても防衛しないことがベストだと考えているようです。これは不思議な論理ですね。警察をなくしたら、泥棒はなくなるんでしょうか。戦争は起こらないと信じていたら起こらない、というのは宗教みたいなものです。
「不戦条約があるから戦争は起こらない」という人もいますが、第2次大戦は不戦条約の後に起こったのです。軍隊をもたない国は、世界中でもバヌアツやツバルのような小国しかありません。平和を願うだけでは、平和は守れないのです。
1946年に進駐軍が日本軍を解体して無力化するために憲法を改正したのは、占領政策としては正しかったのですが、それから68年たっても「集団的自衛権」という当たり前の話が大騒ぎになるのは困ったものです。まだ時間がかかりそうですが、よい子のみなさんは憲法を改正して国を守るしくみを整備することをまじめに考えてほしいものです。