行ってみたい国、住んでみたい国 --- 岡本 裕明

アゴラ

海外生活。観光旅行するのと暮らすのでは全く違う尺度を求めなくてはいけません。

ここバンクーバー。日系旅行会社にとって難しい都市とされるのはリピーターが少ないからとも言われています。もう一度行きたいと思わせる観光施設があるわけでもなし、特別うまいフード文化があるわけでもありません。(あえて言うならここの中華料理はうまいと思います。ホント)それなのに世界で最も住んでみたい人気都市の三本指に入ります。


何故か、と自分で分析してみると
外国人を受け入れるマインドとマルチカルチャーな都市の雰囲気(事実、中華系が3割近くいるともされていますし、空港近くのリッチモンドに行けば7-8割ぐらいまで増えます。)
四季があり、気候の変化を感じることができること
物価は人件費がかさむサービス絡み(レストランや修理、美容など)は高いですが、物品購入だけならまずまずの水準
自然と環境を重視していること
人々のライフがビジネス主体ではなく、せかせかしていないこと
安全面は外国にしては良好

このあたりが私の思いつく主たる理由であります。

例えば東南アジア。物価は安いけれど気候は高温多湿。モノに溢れた日本と比べ不便さを感じるかもしれません。
アメリカ。都市部ならともかく、「アメリカン」という独特のアイデンティティにちょっと踏み込めない違和感を覚える時が無きにしも非ずです。
カナダの他の地域。冬の寒さと雪は嫌です。

アメリカのCNBCが報じた香港上海銀行の調査として挙げた外国人が暮らしやすい国トップ10。スイス、シンガポール、中国、ドイツ、バーレーン、ニュージーランド、タイ、台湾、インド、香港。

見た瞬間、我々の期待水準からはありえない統計結果に唖然としております。

スイスが住みやすいか、といえば私は嫌です。スイスに数週間いたこともあるし、スイス人の友人もいましたが結論からすると物価水準が異常、言語的にも苦痛、閉鎖的な雰囲気もあります。物価の高さといえばシンガポールではカローラが600万円という世界です。これでも住みたいでしょうか?

日本人には日本ほど住みやすい国はないのですが、日本人が敢えて外国に住みたいという選択肢を考える場合、三つのポイントをよく含んでおくべきかと思います。

先進国であること: 停電もないし、モノが手に入らないということだけでなく、先進国は人々の教育水準が高く、自分に刺激を与えてくれることが多いでしょう。

物価水準: どんなに住みやすくても物価が日本人のポケットにふさわしくない国は厳しいと思います。上述したように北米は「Do it by yourself」の世界ですから食材でも部品でもかなり安いし、大量買いすればそのメリットは日本よりはるかに安い世界を作り出すことができます。但し、不動産だけは残念ながら相当高いことは日本がデフレで長く停滞していたことと為替水準が繰り出す価格差があるかと思います。

環境: 以前ラスベガスに駐在をしていた友人が1年でギブアップ退職しました。「ここは人間が住むところではない!」と断言しておりましたが、気候、人々、社会などあらゆる意味での環境がバランスされていることが重要であります。

多くの日本人は観光を通じて海外には出ますが、住むという観点で考えることは少ないと思います。ハワイは住みやすいか、といえば一部のエリアに留まり続ける限りなら、という条件付きで私はありだと思っています。

海外生活を考える場合、なかなかすべてを満足する都市などはあるわけありません。しかし、「住めば都」という言葉があるようにいつの間にか同化しているという事もあるのでしょう。なかなか、評価しにくいものがあるとは思いますが、私の主観も含めた暮らしやすい国とはこんなものかな、と考えております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年11月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。