君は海を見たか --- 長谷川 良

アゴラ

ウィーンの国連で11月3日から5日まで内陸開発途上国(LLDCs)の第2回国連会議が開催された。ボリビアのエボ・モラレス大統領ら政府首脳を含む1000人を超える政府関係者、外交官たちが参加した。

内陸開発途上国 (Landlocked Developing Countries)とは、国土が海から離れた内陸国のため経済・工業開発が遅れている国を意味する。現在32カ国だ。大陸別にみると、アフリカ大陸16カ国、欧州4カ国、アジア10カ国、南米2カ国だ。LLDCs諸国の総人口は約4億5350万人だ。


カザフスタンのアルマティで2003年8月、LLDCsの初の閣僚レベル会合が開かれ、そこでLLDCsが直面するの諸問題解決のための「アルマティ行動計画」が採択された。11年ぶりに開催されたウィーン会議はLLDCsの第2回国連会議となる。

最短の湾岸まで平均距離はLLDCsの場合、1370キロだ。例えば、ガザフスタンは3750キロ、キルギスタン3600キロと海までの距離がもっとも遠く、モルドバ170キロ、スワジランドは193キロで最も近い。いずれにしても、海まで距離があるため、輸送コストが高くなる。

世界銀行の推定によると、通常コンテナー輸送の場合、LLDCsの場合、平均輸出コストは3204ドルで、海に隣接する国の平均1268ドルと比べ2倍以上かかる。一方、輸入の場合、海に隣接する国の1434ドルに対してLLDCsは平均3884ドルだ。ちなみに、LLDCsの7カ国は鉄道網がない。

ただし、LLDCsの2006年の平均輸入日数は57日間だったが、14年には47日間と短縮された一方、輸出平均日数でも同期間、49日間から42日間とこれも短縮されている。LLDCsのGDPに占める対外貿易は平均78%と、世界の平均約61%より大きい。LLDCsにとって、対外貿易は国民経済の死活を握っているわけだ。

ウィーン会議では、輸出入コストの節約、道路・鉄道・空路のインフラ整備、地域経済との密接な連携、グローバル経済への統合などについて、関係国が話し合った。

話は飛ぶ。当方は港町生まれだから海を知っているが、内陸国オーストリアにきて人生の半分以上を暮らしていると、海が恋しくなる。取材のためギリシャのクレタ島やテサロニケ市を訪問した時、その遠景に浮かぶ船舶、海鳴りを聞いて昔の懐かしい日々を思い出したものだ。

海は人間の故郷だという。広大で堂々とした海の風景は人間に畏敬の念を呼び起こす。海を知らずに生活する人々はそれだけ大きな可能性を失っているのかもしれない。LLDCsの会議をフォローしながら、海への接点を求める国々の姿、その努力に共感を覚えた。君は海を見たか。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。