久々のブログ更新。久々なので気負わずに思ったことを淡々と。
経産省を辞めて2年半、あちらこちら彷徨ううちにふとしたご縁から再エネ・省エネ市場に辿り着いてココで生きていこうと決めつつある。なぜここに辿り着いたかというと単純に言えば太陽光発電市場がバブってたのと、電力自由化が進んでちょうど業界の構造が変わりかけていたからだ。再エネ業界、というより太陽光発電市場、が急速に立ち上がってバブってくれた一方、電力会社が弱ってて新規参入者が相次いだことで私もその端っこにぶら下がってなんとか飯を食うことが出来た。
(経産省資料より抜粋)
ただ幸か不幸か太陽光発電市場は、国も電力会社も新規参入時業者も、始めから「3年間の期間限定(=利潤確保期間)」、と認めていたバブルだったので予定通りにはじけつつあり、これから先が再エネの本当の実力が問われる時期になる。余談だが新エネベンチャーの雄だったエナリスの最近の混乱ぶりは何だか象徴的だ。実際そろそろ太陽光発電市場は振興というよりむしろ引き締めないとまずいタイミングで「国内の送電網の太陽光発電の受け入れ能力が30GW程度」と言われているのに「計画申請が70GW」に登っており、経産省は本格的に手綱を引き締める準備をしている。こちらとしてもあと1~2年くらいはバブルの残り香で飯が食えるかもしれないが、その後に向けてまた新しい食い扶持を見つけないといけないタイミングに来ている。
今のところは太陽光発電でのノウハウが活用できる他の電源開発へのシフトを計画しており、それなりに動きだしてもいるのだけれど、太陽光発電の時のように権利の転売市場が立ち上がる程他の電源は収益性は良くなさそうなので、単に他の電源にシフトすれば生き残れるというほどことは単純ではなさそうだ。太陽光発電は利回り10%以上取れる長期投資商品でかつ償却も取れたので非情に魅力的だったのだけれど、他の風力とか小水力とかいった電源だと良くても利回り8%くらいしか取れなさそうで、かつ地権者との利害調整も困難で時間もかかる。地熱やバイオマスは利回りが良いみたいだけれど、資本力が必要だしなおさら利害調整が困難なのでブランドがないと参入が難しい。ただバイオマスは燃料周りで新品種の東南アジアへのプランテーションー逆輸入に取り組む会社が出て来て色々と面白くはなっている。バイオマスは元が産廃業なのでどうしても業界としてキナ臭いのだけれど、もしかしてこれを機に変化して再エネピーク電源の主役となるのかもしれない。
(適当に宇佐美が作った図)
ただ再エネ市場はなんだかんだ言っても大電力会社のおこぼれでやっている市場なのでいわゆる5大電力会社の向かっている方向を見ると、「ピーク電源は老朽化した石油火力を廃棄しつつ再エネシフト、ミドル電源はこちらも老朽化したものは廃棄して新電力との協業を進めつつ自前の高効率の電源は開発、ベース電源として原発を再稼働」という感じなので零細の再エネの立場としては、ミドル電源に参入する資本があってなおかつイキのよい新電力とどのように補完的な関係を築くのか、ということを考える必要があるように思える。
そういう意味じゃソフトバンクなんかが一周回って面白い動きをしていると思っていて、燃料電池をピークーミドルの分散電源として位置づけて電源開発を進めていきそうな雰囲気を漂わせている。アメリカ資本の燃料電池ベンチャーのブルームエナジーと共同出資で「bloom energy japan」という会社を立ち上げていて、ビルやデータセンター向けの電源として導入を進めている。稼働率が高ければKw25円程度で採算が取れるようなので、自立電源でもあるしBCPの観点も含めてデータセンターを中心に広がっていくのかもしれない。原発が止まり続ければ、もう少し電力料金も上がるようだし。でもまぁやっぱりこちらも政治力や資本力が無いと参入できそうにない市場なので興味はあるけれどちょっととても手は出せない。。。。そういう意味じゃ資本力がなくとも取れる権利が取引の対象物となった太陽光発電市場は本当に魅力的な市場だったのだと思う。
(http://news.mynavi.jp/photo/news/2009/08/07/037/images/001l.jpgより)
結果やっぱり電源の市場の大層は資本力がある人達の市場で、零細はマイクロ水力みたいな小さい電源を開発しつつ、資本が乏しくともやって行ける省エネ市場に活路を見いだすことになるのかなと思うに至る。そういうわけで色々と省エネの商材に手を出し始めているのだけれど、そんな中で長期的に省エネ市場で張るならやっぱり電力消費が強烈にあがりつつあるデータセンタの省エネ市場を避けて通れないのではないかと思う。データセンタの省エネ市場は現状過当競争のようだけれど、メモリの進化でデータセンタ自体のアーキテクチャが大きく変わりつつあるようで、東芝はフラッシュとMRAMで圧倒的な省電力を実現するというようなことを言っているなので、こうした技術変化がどのくらいのスパンで起きてくるかを少し調べてみようと思う。
ということで色々と止めどなく語ったが、ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2014年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。