ホンダが日本の自動車業界の中ではかなり異質な経営方針であることをご存じでしょうか? 同社は「地産地消」(日経)と言われるように車が必要なところで生産する経営を他社より強く打ち出しています。そのため、同社の日本からの輸出比率はびっくりするほど低く、国内だけでみればこれほどドメスティックな会社はない状態になっています。
2014年1月から9月の数字を見てみましょう。国内生産台数は74万5千台、それに対して日本から輸出した台数は僅か2万5千台。つまり輸出比率3.3%であります。富士重工やマツダの7-8割と比べると全く逆の状況であることが見て取れると思います。
では、それが経営にどうつながっているのでしょうか?
自動車各社は円安効果もあり、利益の上積みをしていますが、ホンダはマイナス。ただ、為替は良い時、悪い時があり、長期的には波打つものですからここではその議論は横に置いておきましょう。
問題は国内生産であります。ホンダの海外を含めた製造総数は2013年で430万台と多少の振れ幅はありますが、企業としての成長は遂げています。ただ、国内製造台数の世界生産に対する比率でみると2010年は27%でありましたが2013年には20%を切るところまで下がっています。まさに地産地消が進んでいるという事でしょう。
ただ、国内販売が不振で在庫水準が上がっているため一部工場で金曜日を休みにして生産調整が行われています。これは「地産地消で輸出手段がない同社」にとってグローバル化する自動車産業において実に不思議な状況にあるともいえるのです。
さて、きょうのテーマであるホンダにみる日本の縮図でありますが、言わずもがな、日本の消費力の減退であり、国内企業が日本の需要だけに頼っていては生き残りが厳しいという事であります。輸出がない世界を考えると国内の消費能力は確実に落ちています。需給バランスが改善してきたと日銀は主張しますが、供給量を下げれば需給はバランスします。
ホンダの例を考えると国内需要低迷→生産調整→雇用や収入にマイナス→消費減退という負のサイクルが生じているわけですが、これが日本レベルになれば当然凄まじいマイナスの力になるという事です。日本には小さいなりの消費があるから現状のままでよいとすればそれは若い人を含む次やその次の世代にはあまりにも酷であります。今の若者はただでさえ日本の将来に期待を寄せていません。いわゆるあきらめの境地です。年金をなぜ払わないかといえば払ってももらえるかどうか分からないと答えます。しかし、この論拠の本質的なバックグラウンドは今、月々15250円を払う価値より払わないで使っちゃった方がよいと思っているという事です。
私の小中学校時代のクラスメート。最近二人会いましたが一人は期間雇用であと4年。もう一人は全く仕事をしていませんでした。
このブログを見に来てくれるような方々は皆さんしっかりしていることかと思います。が、世の中、もっと広く見渡すとびっくりする世界が広がっているのでしょう。それを考えると縮みゆく日本、老いゆく日本の将来に不安を持たないわけにはいきません。二人のクラスメートも現状打破をめざして変わろうとしていました。もがいている、というのが正しい表現でしょうか? 我々はどんな手を差し伸べることができるのでしょうか?
ドメスティックな会社になったホンダの行く姿と日本の姿がある意味、重なって見えるのは「過去の栄光」という共通点かもしれません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。