原油価格はアメリカの金利と連動するか --- 岡本 裕明

アゴラ

本日発表の11月のアメリカの雇用統計はよさそうだ、という事前の声はあちらこちらから聞こえていました。私も先月の経済雑感で11月の雇用統計は良くなる、と指摘していました。これは季節的要因もあり、クリスマスショッピングなど消費が増える11月と12月は例年、雇用が増える傾向にあります。よって、2月と3月に発表される1月と2月の雇用統計で多少調整を入れると予想しておいた方がよさそうです。


それにしても事前予想23万人増に対して32万1千人増というのは出来過ぎのような気がします。失業率は5.8%と変らず、労働参加率は62.8%、賃金は0.4%増となっています。この感じですと2015年の金利引き上げは現実のものとなるのでしょうか? あとはインフレ率が焦点となりそうです。オイルの価格が下がっていること、シェールの行方というのも気になるところです。

昨日、あるパーティーでカナダ最大手グループの石油会社のシニア氏らと歓談した際、当然の話題はオイルの行方。アルコールが入っているから少しはフランクな話が聞けると期待したのですが、「全然わからない」を繰り返していました。はっきり言い切ったのは石油価格はOPECが決めることでそのリーダーはサウジであるという事。あとはアメリカのシェールがどうなるのか、このあたりが今後の展開のキーとなりそうだと。私はこの石油安はさほど長くは続かないと思っています。サウジはゲームをしているように見えます。ただ、それが半年なのか、それ以上なのか、そこは分かりませんが、アメリカの利上げとタイミングの呼応を合わせるかもしれません。

ところでアメリカの雇用統計が引き締まると利上げがより現実のものになる為、ドルが買われ、円が売られる動きが強まります。私が見ているニューヨーク市場の金曜日の日中の相場は何と121円台半ば。昨日より1円50銭以上も円安が進んだことになります。日本のメディアでは「これ以上の円安は望まない」というトーンが目立ってきましたが、一旦勢いがつくと止められないのがこの為替であります。こちらの銀行のアナリストの見解でも「金融を引き締めるドル、緩めるユーロ、円」で「当然の動き」はありうるとしていることからここからは円安が苦しく思える展開になりそうです。

特に消費者の懐にダイレクトに響き始めるのは来年春前ぐらいからだと思いますので今の段階で既に「高い!」と嘆く主婦たちの声は政府と日銀に向かう可能性が大いにあり得ます。その際、緩めた金融を引き締める手段を持つのか持たないのか、極めて微妙な立ち位置になるとみています。

衆議院選挙の行方もそろそろ気になる頃ですが、私はむしろその先である安倍政権の行方を懸念しております。それは2012年末から始まったアベノミクスを振りかざす政権が快進撃を遂げたのに対して次の政権は日銀と共に逆風にさらされるいわゆるディフェンス政権になるとみています。それは消費者物価が大きく跳ね上がり、生活が苦しくなる庶民、または年金暮らしの高齢者から厳しい声が出ると予想しています。その不満を抑え、1年半の延期で消費税引き上げをなしえるには相当のハードルの高さを覚悟する必要もありそうです。

つまり、野党には有利な状況が出てくるはずです。ならば、野党は与党にすり寄る姿勢ではなく、断固としたポリシーを持ち、野党再編をすすめ、分かりやすい政治舞台を作り上げるべきです。また、与党の身を引き締めさせるためにも野党に頑張ってもらわないといけないでしょう。日本の政治は分かりにくいというのはこちらの政策には賛成だけどこちらには反対、というラインアップが各党入り乱れ、国民はどこに入れて良いか分かりにくいという事ではないでしょうか?せっかくなら各党の主要政策を○×△ぐらいに単純化し、表にしてもらわないと一般庶民には掴みにくいと思います。

2015年が近づいてきていますが、来年のいつか、ベクトルは逆に向く、とみています。そのタイミングもアメリカの金利引き上げと呼応を合わせることになるような気がしております。いつまでも同じ空気が流れていると思うと思わぬしっぺ返しが来るかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。