ふるさと納税で「犬猫殺処分ゼロ」を実現させた自治体とは --- 並木 まき

アゴラ

勇気ある先進市の事例から「犬猫殺処分ゼロ」への取り組みを学び、全国の自治体も追随するべき時がきた

動物の殺処分をゼロにするための取り組みが、ここ数年で急速に進んでいる。

しかし、環境省の発表で公表されている最新の値では引き取り数が20万9,388頭、殺処分数は16万1,847頭(ともに平成24年度)で、依然として多くの尊い命がガス室や注射によって失われている現状がある。

環境省でも平成25年から「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」を始動させ、犬猫殺処分の減少と、最終的なゼロを目指して様々な取り組みを進めているが、基礎自治体である市町村が率先して取り組みを進めることで、より大きな成果が期待できるものと筆者は考えている。


広島県神石高原町がふるさと納税制度を活用して、犬猫殺処分ゼロに向けた取り組みを2014年11月から始めたことをご存知だろうか。

12月17日の毎日新聞によれば、同町では12月末までに1億円を目標にしているとのことだが、既に約1カ月で約2,813万円が集まり、昨年度の約17倍もの寄付金が集まっているという。

筆者はこの取り組みを非常に高く評価していて、仕組みとしては町内に本部を置くNPO法人と連携し、殺処分前の犬を引き取り、訓練のうえで飼い主を探す活動の支援に充てるそうだ。

現在、日本全国で飼われている犬や猫の数はおよそ2,061万頭と推計(平成25年 一般社団法人ペットフード協会調べ)されており、これは平成26年4月1日現在における15歳未満人口の1,633万人よりも多い数字だ。

多くの人がペットを飼っている実態がある中で、殺処分をゼロにする取り組みは、もはや社会全体で行っていく必要があるともいえるだろう。

しかし「犬猫のほうが人間より大事なのか」と市民から批判を受けるケースもあり、自治体が積極的に予算を確保しづらい点も現実の課題として残る。

そういった面からも、前述の広島県神石高原町の取り組みに学ぶところは多い。
まず、筆者は市議会議員として8年目を迎えているが、本会議での当局の答弁を聞いていると、財政難により「予算の確保が難しい」「限られた予算の中で~」という言葉が頻繁に聞こえてくる。

殺処分ゼロへの取り組みなどは、どうしても社会保障や道路補修などと比較して優先順位を下げられてしまう性質があるが、ふるさと納税を活用することで、こういった性質の事業への資金確保が容易になる点が証明されたのだ。

また昨今、ふるさと納税制度は地域の特産品などの“お礼の品合戦”が過熱気味の印象もあり「よりお得な品物を出さないと寄付が増えない」という風潮すらある中で、今回の神石高原町の取り組みは、本来のふるさと納税の趣旨である“寄付者が使途を指定し、自治体の取り組みを応援する”という、制度の原点ともいえる形での成功例が、またひとつ増えたともいえるのではないだろうか。

平成24年に動物愛護管理法が改正され、自治体が、所有者から犬又は猫の引取りを求められた場合でも、拒否できるようになった。

また、引き取った犬又は猫の返還や譲渡に関する努力義務規定も設けられている。

多くの自治体が、今回の神石高原町に追随してくれれば、より早い段階で犬猫殺処分ゼロが実現していくのではないか。

これまで予算確保の困難を理由に成果ある取り組みを進められなかった自治体であっても、同町に実績が出たことで、意欲さえあれば同様の取り組みが可能だ。

先進的な取り組みに成功した神石高原町の勇気と意欲に敬意を表したい。

参考
統計局ホームページ/統計トピックスNo.82/全国 

環境省 _ 人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト | 推移と現状 

ふるさと納税:犬の殺処分ゼロにも – 毎日新聞 

平成24年に行われた法改正の内容 [動物の愛護と適切な管理] 

並木 まき

市川市議会議員
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