なぜ、日本では衰退する農業が、世界では成長産業なのか? --- 内藤 忍

アゴラ

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イギリスの経済誌「The Economist」の最新号(2015.1.3.~9)に興味深い記事を見つけました。1994年からの過去20年で、アメリカでは農地への投資が株式や債券、不動産といった投資対象よりもリスクが低くリターンが高かったというのです(写真)。

リスクを横軸、リターンを縦軸に取ってプロットした場合、左上にあればあるほど「ローリスク・ハイリターン」の魅力的な投資ということができます。アメリカの農地への投資が金や、株式よりリスクが低く、年平均で12%というのはかなりの高利回りです。


しかも、記事によれば農地は株や債券のようなペーパーアセットとの相関が低く(つまり分散効果が高い)、インフレにも比較的強く、リーマンショックのような経済的なショックにおいても底堅いという特徴があるのです。

既に、政府系ファンドやプライベートエクイティファンドが、農地投資を本格的に開始しているという話もあります。しかし、まだインフラ関連に投資するファンド(144)や不動産の投資するファンド(473)に比べると、農業関連ファンドは36に過ぎず、これからさらに参入が増えることが予想されます。

まだこの業界にはインデックスも存在せず、アナリストレポートのなく、過去の運用実績(トラックレコード)も整備されていないそうです。これは、20年前の不動産ファンドやインフラファンドと同じだという指摘もあります。

市場として黎明期であるということは、投資のオポチュニティがそこに残っている可能性を示唆しますから、益々魅力があるように見えてきます。

しかし、日本の個人投資家が、このような農業関連の投資をしたいと思っても、その方法はまだ限られています。農業関連の会社の株式を購入するといった方法くらいしか考えられず、農地の生産性向上によって投資リターンを上げていくような農地ファンドにアクセスする方法は、見つかりません。

日本の農業の実情には詳しくありませんが、日本でも、農業がビジネスとして成立する仕組みが整備されれば、農地ファンドのような新しい資金が、農業分野に入りこみ、近代化を即し、成長産業にすることも夢ではないと思います。そのためには、規制緩和によって、成長戦略のトップランナーにする位の政府の積極的な関与が必要だと思います。

今回の記事でわかったこと。それは、世界的には「農業は成長産業」だということ。日本の農業のイメージとは随分違います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。