2014年12月14日、経済産業省は、2013年度のエネルギー消費によるCo2の排出量が前年度比1.4%増の12億2,400万トンと過去最高になったと発表した。
全排出量の9割程度がエネルギー由来のもの。このうち3割超の産業部門の排出量は前年度比3%の増。原発に代わる発電手段として、石炭の消費量が同1%増えたことも排出量拡大に影響した模様である。
2009年9月、国際気候変動サミットの開会式において、(当時の)鳩山由紀夫首相は「2020年までに1990年比で25%の温室効果ガスを削減する」と宣言した。今日の動向はこの「国際公約」に反する動きともいえる。また、頻繁に出現する異常気象を目の当たりにすると、削減への努力を世界に先駆けて行う必要を痛感する。
■地球環境のイロハ
宇宙空間の温度は約マイナス270℃。太陽から放射されるエネルギーに暖められていなければ、次第に地球も宇宙と同じ温度となり、極寒の星になっていたはず。太陽系の惑星の温度を決める要因の一つは、太陽からの距離。あと一つは、「大気」の存在。
地球の平均気温はマイナス18℃位になるとのことであるが、「大気」が作用し、暖かくなっている。すなわち、大気中の水蒸気やCo2は、地表から宇宙に向けて放射される熱の一部を宇宙空間に放射するが、残りは地表に向けて放出する。この内側に向けて放出された熱が「温室効果」をもたらし、地球を暖める。大気の温室効果は、プラス33℃ほど。
33─18=15 だから、地球全体の平均気温は15℃前後に保たれているわけ。
温室効果をもたらす大気の成分は、寄与率で見ると、一番大きいのが水蒸気、二番目がCo2で約15%とのこと。温室効果33℃のうちCo2による効果は33×0.15≒5。
大量のCo2が排出され、大気中のCo2濃度が上がれば気温上昇が起きることになる。
地球のCo2の平均濃度は、20世紀産業革命から始まった化石燃料の使用の増加に伴い上昇、それまでほとんど変わらなかった平均濃度が100年間で290ppmから一挙に380ppmへ。人口増と全人類の先進国化に伴い一層この濃度は上がることが予想される。
ちなみに、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気象変動に関する政府間パネル)は、「90%の確率で20世紀中に約0.7度の気温上昇が起こっており、その原因の60%は人間の排出したCo2に起因する」と言っている。
■日本のエネルギー消費
小宮山宏先生によると、日本のエネルギーの使用先は、3分類されるとのこと。
1.エネルギー変換(例えば、石油を電気に変換する際などのエネルギーロス) 30.3%
2.ものづくり(化学、鉄鋼、ガラス、紙の生産など)にかかるエネルギー 30.6%
3.人間の日々のくらしで消費するエネルギー 39.1%
「エネルギー変換」におけるロスは、石油などの化学エネルギーを電気エネルギーに変える際に原理的にかかるものなので、これを改善することはむつかしい。そこで、「ものづくり」と「日々のくらし」におけるエネルギー消費量の削減がカギになる。
発電所からの電気は、「ものづくり」と「日々のくらし」に使われ、その45%が「ものづくり」、55%が「日々のくらし」で使われているとのこと。
■エネルギー削減は「日々のくらし」の分野で
日本の企業は高騰する石化燃料の消費量を必死で減らし効率化を追求して生き残りを図ってきた。生産プロセスの効率化によって減らせるエネルギーのコストと、設備投資に必要なコストを天秤にかけ、「儲かるから」積極的に省エネを推進した。そういう意味からは、「ものづくり」の分野での一層の省エネには限界がある。
したがって、削減のターゲットは「日々のくらし」の分野。この分野は、家庭とオフィス、輸送に大別される。
家庭とオフィスでのエネルギー消費で割合の大きいのが、お湯づくりと冷暖房と照明。
人の移動と業務用の物資の輸送にそれぞれ半分くらいずつエネルギーを使っている。ひとの移動については、移動量では公共輸送が多いが、エネルギー消費では自家用車が80%を占めている。
■具体的には、どうするか
・住宅/オフィスの高断熱化。窓ガラスは二重に。エアコンの性能アップ
・給湯器の高効率化(少しのエネルギーで空気や水から熱をくみ上げて温める=ヒートポンプシステム)。また、灯油やガスから水素を作り酸素と反応させる家庭用燃料電池を使って、発電と同時にお湯を作る。
・民家もビルも工場も学校も駅も、屋根という屋根に太陽電池を設置。
・電気自動車や燃料電池車などの導入による省エネ化の促進
・長距離物流は鉄道へ。トラック輸送は集配所まで。
結局、住民と自治体の考えを変えるように省エネ教育を徹底する。このような設備投資をしても数年のうちに元が取れ、儲かることをわからせる。そして、水素を多く使うように、使えるように、街づくりの発想が不可欠。
水素の活用の際、忘れてならないのが、「水素医学」。
活性酸素がからだを破壊することで、老化が進んだり、病気になったりすることはよく知られている。活性酸素をいかに無くするかが課題とされているが、水素はほとんどの酸化ストレスモデルや炎症性モデルに効果を持つことが解明され始めている。水素は還元力を有し、活性酸素を取り除くらしい。摂取方法は、水素ガスの吸引、水素水の飲用、水素生食の点滴、水素入浴、水素化粧品など。手軽に、摂取できる街の態勢ができると面白い。
岡光 序治
会社経営、元厚生省勤務
編集部より:この記事は「先見創意の会」2015年1月6日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。